熊本県内にお住まいのご家族が亡くなられた後、「遺産が基礎控除額を超えるか」を早く知りたい方もいるでしょう。ただし、預金や不動産の金額を一つ並べるだけでは、相続税申告の要否を決められません。まず誰が相続人に当たるかを確かめ、相続税の計算に用いる人数と、各人の課税価格として確認する項目を分けて考えることが大切です。
基礎控除額は法定相続人の数によって変わり、相続放棄者や養子がいる場合には人数の確認にも条件があります。また、配偶者の税額軽減や宅地等の特例を見込む場合は、基礎控除との比較とは別に適用条件を確かめる必要があります。家族関係、財産債務、手元にある資料を順に整理し、まだ分からない項目は確認待ちとして残しておくと、税理士にも状況を伝えやすくなります。
SECTION 01
基礎控除と比べるのは、遺産の見た目の総額ですか?
預金など、いま見えている金額の合計をそのまま基礎控除額と比べるわけではありません。相続税の総額を計算するときは、まず各人の課税価格を求め、それを合計した「課税価格の合計額」を基礎控除額と比較します。手元で確認できた残高だけでは、この比較に必要な金額が定まったとはいえません。
比較する金額と順序
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。課税価格の合計額からこの基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を計算します。金額を比べる前には、各人の課税価格だけでなく、計算に使う法定相続人の数も確認が必要です。相続放棄をした人や養子がいる場合は、その人数の算定方法を別に確かめます。
たとえば、家族が確認した預金残高を足して基礎控除額より小さく見えても、それだけを理由に相続税申告の要否は決められません。個別の課税価格がまだ定まっていない段階では、比較する金額そのものが未確定だからです。先に、誰が相続人に当たるかを確認し、人数の数え方と課税価格をそれぞれ確かめてから比較します。
参照先(基礎控除額と比較する前の課税価格の合計額を確かめる。/課税価格の合計額と基礎控除額の比較方法を確かめる。):国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」
SECTION 02
配偶者と子のうち、誰を相続人として確認しますか?
亡くなった方に法律上の配偶者がいる場合、その配偶者は相続人です。配偶者以外の人は、定められた順位に従って相続人になります。子は第一順位に当たるため、家族の人数を考える際は、まず配偶者と子の関係を確認します。亡くなった方と同居していたか、熊本県内のどこに住んでいるかだけで、相続人を決めることはできません。
一緒に暮らしていた人と相続人は同じとは限らない
長年生活を共にしていた人でも、内縁関係の人は法律上の配偶者として相続人に含まれません。反対に、別々に暮らしているというだけで、法律上の配偶者や子を確認の対象から外すこともできません。住所や日頃の交流を手掛かりに人数を先に決めるのではなく、亡くなった方との関係と、配偶者以外の人に適用される順位を分けて確かめることが大切です。
配偶者と子がいると思っていても、子については亡くなった方より先に死亡していないかが次の確認点になります。その場合は、その子の直系卑属との関係を別に検討するため、現在連絡を取れる家族だけを数えて終わりにしないようにします。
参照先(配偶者とそれ以外の人の相続人としての位置づけを確かめる。):国税庁ホームページの「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」
SECTION 03
子が先に亡くなっているとき、孫は人数に関わりますか?
亡くなった方の子が、亡くなった方よりも先に死亡しているときは、その子の直系卑属である子や孫などが相続人となります。たとえば、先に亡くなった子に子がいるなら、その人と亡くなった方との関係を確認します。「孫だから人数に入る」と一律に決めるのではなく、間にいる子が既に死亡しているかが判断の出発点です。
不在と、先に亡くなったことを分ける
子と孫の両方がいるときは、亡くなった方により近い世代の子が優先されます。したがって、子が生きているのに連絡が取れない、あるいは離れて暮らしているという事情を、子が既に死亡している場合と同じようには扱えません。誰の子が先に亡くなり、その下の世代に誰がいるのか、家族ごとのつながりを確かめてから人数を検討します。
参照先(子が先に亡くなっている場合の相続人を確かめる。):国税庁ホームページの「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」
SECTION 04
相続放棄をした人は、基礎控除の人数からも外れますか?
相続放棄をした人については、「相続人として扱われるか」と「相続税の基礎控除に使う人数に入るか」を分けて考えます。相続人の範囲を確認する場面では、放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。一方、基礎控除額の計算に用いる法定相続人の数は、放棄がなかったものとした場合の人数です。
放棄しても、基礎控除用の人数は直ちに減らさない
家族の一人が放棄したと聞いたとき、その人をどの場面の人数から外すのかを先に確かめてください。放棄がなかったものとするのは、ここでは相続税の基礎控除額を計算するための人数についてです。放棄した人が相続人としての地位を保つという意味ではありません。この違いを押さえておけば、放棄後の相続人の範囲を考えることと、基礎控除額を求めることを混同せずに済みます。
人数を確認する際には、放棄した人がいるかを把握したうえで、放棄がなかった場合の相続人の数を検討します。さらに養子がいる場合は、放棄とは別に、基礎控除用の人数に含められる養子の数にも条件があります。
参照先(放棄した人の相続人としての扱いを確かめる。):国税庁ホームページの「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」
参照先(放棄者がいる場合の基礎控除用の人数を確かめる。):国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」
SECTION 05
養子がいると、基礎控除の人数はどう変わりますか?
亡くなった方に養子がいる場合、養子である人の数をそのまま基礎控除額の計算に使うとは限りません。相続税の計算に用いる法定相続人の数へ含める養子には、原則として人数制限があります。亡くなった方に実の子がいる場合は養子1人まで、実の子がいない場合は2人までです。ここで確認するのは税計算上の人数であり、養子という身分そのものの人数を変更する話ではありません。
実の子の有無と例外を確かめる
養子が複数いるときは、まず亡くなった方に実の子がいるかを確かめ、次に人数制限に照らして検討します。ただし、養子を人数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合は、その原因となる養子を算入できません。個別の相続がこの例外に当たるかどうかは、人数だけから決められません。
また、養子の中には相続税の人数計算上、実の子として取り扱われる人がいます。養子がいると分かった段階で一律に上限を当てはめず、どのような関係の養子なのかを確認する必要があります。
参照先(養子について基礎控除用の人数制限を確かめる。):国税庁ホームページの「No.4170 相続人の中に養子がいるとき」
SECTION 06
特別養子縁組による養子も人数制限の対象ですか?
亡くなった方との特別養子縁組によって、その方の養子となった人は、相続税の人数計算上、実の子として取り扱われます。そのため、「養子」という呼び方だけで前節の養子の人数制限に当てはめるのは適切ではありません。確認したいのは、誰との特別養子縁組によって養子となったかです。
縁組の相手を確認してから数える
たとえば家族から「特別養子だ」と聞いても、それだけで亡くなった方との特別養子縁組により養子になったとは決められません。亡くなった方との関係を確認し、その条件に当たる人を相続税の人数計算では実の子として扱います。この取扱いをほかの養子にも一律に広げず、それぞれの関係を確かめてから基礎控除に用いる人数を検討します。
参照先(養子の人数制限を検討する際の取扱いの違いを確かめる。):国税庁ホームページの「No.4170 相続人の中に養子がいるとき」
SECTION 07
人数を確かめた後、基礎控除額と何を比較しますか?
人数の次は、比較に使う金額の側を確かめます
課税価格の合計額の求め方、基礎控除額の式、法定相続人の数の数え方は、SECTION 01からSECTION 06で確認したとおりです。人数を確かめた後は、比較に使う金額の側、つまり各人の課税価格がそろっているかを確かめる段階に進みます。
参照先(基礎控除額と比較する前の課税価格の合計額を確かめる。/課税価格の合計額と基礎控除額の比較方法を確かめる。):国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」
SECTION 08
基礎控除を超えた分に、各人が直接税率を掛けますか?
基礎控除との比較と税率の適用は別の段階です
課税価格の合計額が基礎控除額を上回る場合、その差額を課税遺産総額として捉えます。ただし、差額が出たからといって、各人が実際に取得した財産の金額に税率を直接掛けて相続税額を求めるわけではありません。基礎控除は、相続全体で比較する金額を考える段階に位置付けてください。
例えば、手元で把握した取得額が大きい人について、その金額だけから税率や納税額を決めることはできません。反対に、取得額が小さい人についても、その金額だけを見て税額を結論付けないことが大切です。人数と課税価格の確認から得た比較結果を、各人の税額にそのまま読み替えないようにします。
国税庁ホームページの「No.4155 相続税の税率」は、相続税額を算出する際、実際に取得した財産に各人が直接相続税の税率を掛ける方法ではないことを示しています。この段階では個別の税率や納税額を試算して断定せず、まず基礎控除との比較に使った金額が確かかを見直してください。
参照先(課税価格の合計額と基礎控除額の比較方法を確かめる。):国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」
参照先(基礎控除後の相続税の税率の適用先を確かめる。):国税庁ホームページの「No.4155 相続税の税率」
SECTION 09
配偶者がいるなら、基礎控除だけで申告を判断できますか?
配偶者の軽減は、実際の取得内容から考えます
配偶者がいる場合でも、基礎控除額を確かめただけで、配偶者の税額や相続税申告の要否まで決めることはできません。配偶者の税額の軽減は、亡くなった方の配偶者が遺産分割や遺贈によって実際に取得した正味の遺産額を基に判断する制度です。家族の中に配偶者がいるという事実と、配偶者が何を取得したかという事実は分けて考えます。
遺言書が見つかっていても、配偶者が実際に取得した財産や分割の状況が分からなければ、軽減後の税額を決める材料はそろいません。取得内容がまだ定まっていないときは、配偶者に関わる財産のうち何を確認する必要があるかを整理し、相続税申告の要否も結論を急がないようにします。
参照先(配偶者の実際の取得額と税額軽減の関係を確かめる。):国税庁ホームページの「No.4158 配偶者の税額の軽減」
SECTION 10
自宅などの土地があれば、評価額を下げて比較できますか?
自宅の土地というだけでは減額を決められません
相続または遺贈で取得した宅地等については、小規模宅地等の特例を検討する場合があります。相続開始の直前に、亡くなった方などの居住や事業に使われていた宅地等のうち、所定の条件に合うものが対象です。条件に合う一定の面積までの部分について、相続税の課税価格に算入する価額を減額する仕組みであり、土地を所有していたというだけで減額できるわけではありません。
確認したいのは、相続開始直前にその宅地等をどう使っていたか、誰が取得するか、対象となる宅地等や面積の条件に合うかという点です。家族が「自宅」と呼んでいた土地でも、呼び方だけを根拠に適用を見込まないでください。用途や取得者が未確認なら、特例による減額を織り込んだ金額も確定できず、その減額だけを理由に相続税申告の要否を決めることはできません。
小規模宅地等の特例を受けようとする場合は、減額によって税額がゼロになる見込みでも、それだけで相続税申告は不要と判断せず、原則として期限内に申告する必要があります。申告書には特例を受ける旨を記載し、小規模宅地等に係る計算の明細書などを添えます。宅地等の取得者や用途、分割の状況と必要書類は、国税庁ホームページの「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」で確認してください。
参照先(宅地等の特例が課税価格の計算に関わる条件を確かめる。/宅地等の特例について申告時に必要な記載と書類を確かめる。):国税庁ホームページの「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
SECTION 11
相続人と財産債務を確認するため、何を手元で探しますか?
相続関係の資料と不動産の項目を分けて探す
相続税申告に向けて手元の資料を確かめるなら、例えば国税庁ホームページの「相続税の申告のためのチェックシート」が確認項目の手掛かりになります。遺言書、戸籍謄本等、遺産分割協議書について、それぞれ手元にあるかを見てください。見つからないものは、あるものと混ぜずに確認待ちとしておけば、何を探す必要があるか伝えやすくなります。利用するときは、相続が始まった年に対応する掲載様式を確認してください。
不動産については、住所を把握している土地や建物だけで一覧を終えないことが大切です。同チェックシートには、未登記の不動産、共有の不動産、ほかの市区町村にある不動産を確かめる項目があります。該当するか分からなければ確認待ちにし、項目が載っていることだけを根拠に、その不動産の存在や帰属を決めないでください。
参照先(申告準備で家族関係や分割に関する資料の確認項目を確かめる。/不動産について見落としやすい項目と確認資料を確かめる。):国税庁ホームページの「相続税の申告のためのチェックシート」
SECTION 12
基礎控除との比較を相談するとき、何を伝えますか?
熊本県内で相続税申告の相談をする際に伝えたいこと
熊本県内でご家族が亡くなり、基礎控除との比較に迷っている方は、確認できたことと、まだ分からないことを分けて伝えると相談しやすくなります。相続関係や財産債務の項目について手元で確かめた内容に加え、相続放棄や養子の有無で確認待ちの点があれば、そのまま知らせてください。金額が分からない項目を推測して埋める必要はありません。
宮伸一税理士事務所は、相続税申告と生前の相続税試算を案内しています。ご家族が亡くなった後の相談では、手元の情報をもとに何から確認するか、相続税申告に向けてどの項目をさらに確かめるかを一緒に整理できます。個別の申告の要否や税額は、財産債務の内容などを確かめずに結論付けるものではなく、相談した時点で一定の結論が保証されるわけでもありません。
資料がまだそろっていなければ、確認済みの内容と、探している資料や確認したい項目を伝えてください。事務所に依頼できる内容や申告準備の案内範囲も、相談の際に確かめられます。ご連絡の際は、宮伸一税理士事務所の問い合わせページからお願いします。
参照先(相続税申告と生前の試算が相談対象か確かめる。):宮伸一税理士事務所ホームページの「相続税申告・生前の相続税試算」
FAQ
よくある質問
相続放棄をした家族がいる場合、基礎控除額を求める人数も減らしますか?
いいえ。相続税の基礎控除額に用いる法定相続人の数は、放棄がなかったものとした場合の人数です。相続人としての扱いとは区別し、放棄した人と、放棄前に誰が相続人に当たるかを確認してください。
養子が2人いる場合、どちらも基礎控除の人数に含められますか?
現時点では判断できません。相続税の人数計算では、実子の有無によって養子を含められる原則の人数が異なり、特別養子縁組など取扱いが異なる場合もあります。実子の有無とそれぞれの養子縁組の内容を確認してください。
遺言書に自宅の記載があれば、土地の特例を使って申告不要と判断できますか?
いいえ。小規模宅地等の特例は、宅地等の相続開始直前の用途をはじめとする条件を確かめて判断します。土地の現況や取得する人を確認し、特例を見込む場合は申告書への記載と必要書類についても確かめてください。
運営者
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