熊本県内で事業を営み、決算に向けて棚卸を進めている方は、現物を数えた記録と帳簿の数字が合わないとき、どの資料から確かめればよいか迷うことがあります。数量を記録した資料と仕入れ・販売の取引資料を手元に置き、食い違いのある項目と、まだ理由が分からない項目を分けておくと、状況を伝えやすくなります。
数量を確かめることと、棚卸資産の評価方法や申告内容を決めることは同じではありません。法人には評価方法を選定して届け出る場合の手続がありますが、事業者ごとの届出要否は、設立や事業内容、過去の届出状況などを確認せずには決められません。棚卸の記録、帳簿、法人の届出書と申告資料をそれぞれ何のために見るのか、分けて考えていきます。
SECTION 01
実地棚卸で数えたものと帳簿を、どこから照らし合わせる?
決算に向けて棚卸の記録を整理するときは、まず現物を数えた記録と帳簿上の項目を対応させます。帳簿に載っている名称と現物の呼び名が違う場合、数字だけを比べても同じものを指しているか分かりません。品名や管理に使っている番号など、手元の記録で共通して確認できる情報から照らし合わせます。
比較する前に、対象をそろえる
一つの帳簿項目に複数の現物が対応する場合や、似た名称の品目が並ぶ場合は、どの記録を合わせて比較したかを残しておくと、後から差を確かめやすくなります。数えた記録にあって帳簿上の対応先が見つからないもの、逆に帳簿にはあって現物の記録に見当たらないものも、推測して同じ項目にまとめず、確認待ちとして分けておきます。
対応が取れた項目から数量を比べ、合うものと差があるものを分けて整理します。ここで分かるのは、手元の棚卸記録と帳簿に記された数量の関係です。数量が合ったことだけで帳簿上の金額や評価方法まで確かめられたとは考えず、差がある項目は次に仕入れ・販売の資料との対応を確認します。
SECTION 02
仕入れ・販売の資料は、どの食い違いを確かめるために集める?
棚卸記録と帳簿の数量が異なる項目は、仕入れと販売の資料を集め、記録された動きを順に確かめます。仕入れに関する資料は、帳簿に記した受入れとの対応を、販売に関する資料は、帳簿に記した払出しとの対応を見直す手掛かりになります。まずは品目をそろえ、どの取引とどの帳簿記録を比べているかが分かるようにします。
資料で分かることと、まだ分からないこと
たとえば、現物を数えた数量と帳簿の数量が違うとき、手元の取引資料に載る品目・数量と帳簿への記録が対応しているかを確認できます。一方、資料に該当する取引が見つからないことだけを理由に、差の原因を一つに決めることはできません。資料の保管場所や記録の担当者など、次に何を確かめるかを残しておきます。
一度に全品目を見直すのではなく、差が出ている項目について、棚卸記録、帳簿、該当しそうな取引資料を並べて比較すると、確認済みの範囲が明確になります。資料と記録が一致した部分はその対応を残し、説明のつかない部分は確認待ちとして区別します。取引資料をそろえた段階で数量差が解消したとみなさず、実際の記録を照らし合わせて判断することが大切です。
SECTION 03
数量が合っても、帳簿上の金額はそのまま使える?
棚卸記録と帳簿の数量が一致しても、帳簿上の金額をそのまま確定できるとは限りません。数量の比較は「いくつあると記録されているか」を確かめる作業であり、その金額がどの資料や記録に基づいているかの確認とは別です。金額についても、まず帳簿に記された内容と、手元にある仕入れなどの資料との対応を見ます。
金額の根拠が追える状態にする
同じ品目について複数の資料があるなら、帳簿の金額がどの記録と結び付くのかを確かめます。資料の数字と帳簿の数字が異なる場合は、差のある項目と比較に用いた資料を残し、担当者に確認する内容を明確にしておきます。根拠となる資料が見当たらない金額は、もっともらしい数字で埋めず、資料の所在や確認先を記録します。
数量が一致した項目と、金額の根拠まで確認できた項目を分けておくと、決算に向けて残る確認事項が見えやすくなります。反対に数量に差が残る項目は、その理由の確認と金額の確認を混ぜずに扱います。これらは現物・帳簿・資料の照合であり、法人が棚卸資産の評価方法を選定して届け出る手続が必要かどうかの判断とは分けて考えます。
SECTION 04
棚卸資産の評価方法の届出は、誰のための手続?
現物と帳簿の数量・金額を照らし合わせたら、法人の評価方法に関する届出は別の確認事項として扱います。国税庁ホームページの「C1-25 棚卸資産の評価方法の届出」は、法人税に関して、棚卸資産の評価方法を選定して届け出る場合の手続を案内しています。棚卸で差が見つかったことだけをもって、届出が必要だと判断するものではありません。
届出の対象者を取り違えない
この手続の対象者として示されているのは、棚卸資産の評価方法を選定して届け出る法人です。法人の経理担当者は、現物と帳簿の照合結果とは別に、自社で採用している方法や過去の届出内容を確認する必要があります。手元で届出の有無が分からないなら、提出済みと推測せず、確認先と確認待ちの内容を整理しておきます。
個人事業主も棚卸記録と帳簿の食い違いを確認することはできますが、ここで示した法人向け届出をそのまま個人事業主の手続として当てはめることはできません。法人か個人事業主かを最初に分けておけば、数量差への対応と届出の話が混ざりにくくなります。法人について提出時期を確認するときは、設立した場合など、どの状況に当たるかをさらに確かめます。
参照先(法人の評価方法の届出がどのような手続かを確かめる。/届出手続の対象者を確かめる。):国税庁ホームページの「C1-25 棚卸資産の評価方法の届出」
SECTION 05
設立した普通法人は、届出の提出時期をどう確認する?
普通法人を設立した場合、棚卸資産の評価方法の届出について案内されている提出時期は、設立第1期の確定申告書の提出期限までです。設立日だけから一律の日付を決めるのではなく、自社の設立第1期と、その確定申告書の提出期限を確認します。現物と帳簿の照合作業をいつ終えたかとは、分けて把握する事項です。
中間申告書を提出する場合の扱い
例外として、法人税法第72条又は第144条の4に規定する仮決算をした場合の中間申告書を提出するときは、その中間申告書の提出期限までと案内されています。中間申告に関係する書類があるというだけで、この例外に当たると決めず、該当する仮決算による中間申告書を提出するかどうかを確かめます。確認結果によって、見るべき提出期限が変わります。
設立した普通法人の担当者は、設立第1期の確定申告書に関する情報と、中間申告書を提出する予定の有無を分けて確認すると、どの期限を調べるかが明確になります。過去の届出状況や実際に採用している評価方法が分からない場合は、その確認も残しておきます。設立以外の事情がある法人については、この区分の提出時期をそのまま当てはめず、該当する状況を見ます。
参照先(設立した普通法人の提出時期と中間申告時の例外を確かめる。):国税庁ホームページの「C1-25 棚卸資産の評価方法の届出」
SECTION 06
収益事業の開始や事業の種類の変更があったら、何を確かめる?
法人に事業の動きがあった場合は、まず何が起きたかを区別します。公益法人等や人格のない社団等が新たに収益事業を開始した場合、届出の提出時期は、その開始日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までと案内されています。開始した日と法人の区分を確かめてから、該当する事業年度を確認します。
事業を増やした場合・種類を変えた場合
一方、案内に掲げる設立後、収益事業開始後、法人区分の変更後に、新たに他の種類の事業を開始した場合や事業の種類を変更した場合にも、提出時期が示されています。この場合は、開始又は変更した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までが原則です。所定の仮決算による中間申告書を提出するときは、その提出期限に関する記載もあるため、提出する書類を確かめます。
「収益事業を新たに始めた」のか、「既に事業を行う法人が別の種類の事業を始めた、又は種類を変えた」のかを、同じ条件として扱わないことが大切です。法人の区分、事業を始めた日や変更した日、変更前後の事業内容を確認し、自社に当てはまる区分に沿って期限を調べます。棚卸記録に差があることから事業の種類の変更まで推測せず、届出の検討に必要な事実を別に確かめます。
参照先(新たに収益事業を始めた場合の提出時期を確かめる。/事業の追加や種類の変更があった場合に、該当する提出時期を確かめる。):国税庁ホームページの「C1-25 棚卸資産の評価方法の届出」
SECTION 07
評価方法の届出書と記載要領は、どこで確認する?
法人の棚卸資産の評価方法について届出書を確認するなら、国税庁ホームページの「C1-25 棚卸資産の評価方法の届出」に「棚卸資産の評価方法の届出書」と記載要領が掲載されています。手元に過去の届出書がある場合は、その内容を先に確かめ、現在の記帳で用いている方法と混同しないように整理します。
届出書の書式が掲載されていることと、今回あらためて提出する必要があることは別です。過去の届出内容が分からなければ、その点を確認待ちとして残し、書式を見つけただけで新たな届出が必要だと決めないでください。届出書や記載要領の掲載内容は、実際に利用する時点で確認します。
参照先(届出書と記載要領の掲載先を確かめる。):国税庁ホームページの「C1-25 棚卸資産の評価方法の届出」
SECTION 08
届出書の提出先と法人の申告資料は、同じ確認事項?
「棚卸資産の評価方法の届出書」を提出する場合、その提出先は納税地の所轄税務署長です。ただし、提出先が示されていることから、手元の法人に届出が必要だと判断することはできません。提出するかどうかの確認と、提出する場合の宛先の確認を分けて考えます。
一方、法人の申告書や手引を探すときは、国税庁ホームページの「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税」に、法人税申告書別表等や申告の手引への案内があります。これは申告資料を探すための案内であり、倉庫で数えた数量や個々の棚卸資産の評価額が正しいことを裏付けるものではありません。届出書の提出先を調べる作業と、決算申告に使う資料を探す作業は、目的を分けて進められます。
参照先(届出書の提出先を確かめる。):国税庁ホームページの「C1-25 棚卸資産の評価方法の届出」
参照先(法人の申告書や手引への案内を確かめる。):国税庁ホームページの「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税」
SECTION 09
法人税の案内ページで、棚卸について何まで分かる?
一般的な説明と、手元の棚卸記録は別に確認する
法人税について一般的な取扱いを調べるときは、国税庁ホームページの「法人税」から、タックスアンサー(よくある税の質問)を探せます。そこで分かる一般的な説明と、自社で実際に数えた棚卸資産の数量や取引内容は、性質の違う情報です。案内ページを見つけても、手元の記録と帳簿の差が解消したことにはなりません。
例えば、帳簿上の数量と現物を数えた結果が異なる項目については、どちらの数字をいつ、何に基づいて記録したかを手元の資料で確かめる必要があります。一般的な法人税の案内を、個々の棚卸資産の評価額を示す資料として扱わず、確認できていない数字はそのまま区別しておきます。
参照先(法人税のタックスアンサーを探すための案内を確かめる。):国税庁ホームページの「法人税」
SECTION 10
差異の理由が分からない項目は、どう伝える?
分かったことと、まだ調べていることを分ける
現物を数えた記録と帳簿が合わない項目は、理由を一つに決めて伝える必要はありません。まず、数えた数量、帳簿に記録されている数量、照合できた取引資料を項目ごとに並べると、確認済みの事実がどこまでか伝わります。取引内容まで確認できた項目と、数量だけ確認できた項目も分けておきます。
原因や金額の根拠がまだ分からない場合は、推測で埋めず、何を誰に確認する予定かを残します。例えば、取引資料の所在を確認するのか、現物を数えた担当者に記録の経緯を聞くのかを区別して伝えれば、税理士と確認の順番を相談しやすくなります。差の理由が確定する前に、帳簿の数字を直す前提で説明しないことも大切です。
SECTION 11
棚卸の記録と記帳状況を添えて、熊本県内で何を相談できる?
棚卸記録と記帳状況を添えた相談内容
熊本県内の法人の経理担当者や個人事業主が棚卸について相談する際は、現物を数えた記録、帳簿、照合した取引資料を用意し、差が残る項目と確認待ちの理由を伝えると、何から確かめるかを一緒に整理できます。法人の場合は、過去の評価方法の届出内容を把握しているかも分けて伝えてください。個人事業主に法人向けの届出を前提として当てはめることはしません。
宮伸一税理士事務所の対象地域は熊本県内です。法人・個人事業主の顧問業務のほか、決算申告、確定申告、年末調整をそれぞれ取扱領域として案内しています。棚卸の記録や記帳状況を知らせたうえで、帳簿との差の確認と申告準備について、どの業務として相談したいかを伝えられます。
顧問業務には、領収書・請求書の整理から仕訳入力までの記帳代行と、ご自身で入力した内容の確認・指導という案内があります。ただし、どちらが適するか、また対応できるかや対応範囲は、資料と記帳状況を確認した後の案内となります。ご連絡の際は、宮伸一税理士事務所の問い合わせページからお願いします。
参照先(記帳状況に応じて相談できる業務内容を確かめる。):宮伸一税理士事務所ホームページの「法人・個人事業主様向け 顧問業務・決算申告」
SECTION 12
棚卸後、届出と決算申告の判断をどう分けて残す?
棚卸が終わった後も、「数え終えた」ことと「決算申告に使う数字を確認できた」ことは分けて考えます。まず現物を数えた数量と帳簿上の数量を項目ごとに照らし、金額の根拠となる取引資料がそろっているかを確かめます。差の原因や評価額がまだ分からなければ、その項目を確認待ちとして残します。
法人の評価方法の届出は、国税庁ホームページの「C1-25 棚卸資産の評価方法の届出」が案内する、評価方法を選定して届け出る場合の手続です。過去の届出状況や事業者の区分を確認せずに、今回の届出要否を決めるものではありません。法人の申告書別表等や申告の手引は、国税庁ホームページの「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税」から探せますが、そこへの案内だけで個々の数量や評価額は確定しません。
相談時には、数量と金額の根拠、法人なら届出状況、申告資料について、確認できたことと確認待ちのことをそれぞれ伝えてください。届出と決算申告を一つの判断にまとめず、手元の記録を確かめながら、必要な確認を進められます。
参照先(法人の評価方法の届出がどのような手続かを確かめる。):国税庁ホームページの「C1-25 棚卸資産の評価方法の届出」
参照先(法人の申告書や手引への案内を確かめる。):国税庁ホームページの「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税」
FAQ
よくある質問
個人事業主も、法人向けの棚卸資産の評価方法の届出書を使いますか?
いいえ、国税庁ホームページの「C1-25 棚卸資産の評価方法の届出」は、評価方法を選定して届け出る法人を対象者として案内しています。個人事業主はこの法人向け手続をそのまま当てはめず、自身に適用される取扱いを別途確認してください。
普通法人を設立した場合、届出の時期を確定申告書の提出期限だけで判断してよいですか?
いいえ、所定の仮決算による中間申告書を提出する場合には、提出時期の例外が案内されています。設立第1期の申告状況を確かめ、どの提出期限が該当するかを確認してください。
棚卸に関する取引を自社で記帳している場合も、その状況を伝えた方がよいですか?
はい、宮伸一税理士事務所には、本人が入力した内容を確認・指導するプランも掲載されています。入力済みの範囲と棚卸記録を伝えたうえで、資料を確認した後に案内される対応範囲を確かめてください。
運営者
宮伸一税理士事務所