熊本市にお住まいのご家族が亡くなられた後、故人が知人や事業の取引先にお金を貸していたこと、受け取っていない代金があることに気付く場合があります。入金が見当たらないだけで債権の有無や金額を決めることはできません。まずは、何について、誰から、いくら受け取る予定だったのかを、一件ずつ確かめることが出発点です。
相続税の評価では、貸付金や未収入金などは「貸付金債権等」として扱われ、元本と利息の価額を合わせる取扱いが示されています。ただし、手元の記録から個別の評価額まで直ちに決まるわけではありません。確認できた事実と、相手方への照会などが必要な点を分け、相続税の計算にどう反映するかを整理していきましょう。
SECTION 01
故人の貸付金と未収金を、なぜ別々に確かめるのか
熊本市にお住まいのご家族が亡くなられ、故人が誰かにお金を貸していた、あるいは代金を受け取っていなかった可能性があるときは、まず取引を分けて確かめることが大切です。通帳に入金があっても、それが貸したお金の返済なのか、別の取引の代金なのかは、入金額だけでは分かりません。
区分より先に、一件ごとの取引を確かめる
相続税の財産評価で用いる財産評価基本通達204は、貸付金や未収入金などを「貸付金債権等」として挙げています。ただし、評価上の区分に名前が挙がっていることと、故人に個々の債権があったことは別の話です。「貸付金」「未収金」と書かれたメモが見つかっても、誰との、どの取引を指すのかを確かめる必要があります。
例えば、同じ相手方の名前で複数のやり取りが残っていれば、一つの入金をすべての返済とみなすことはできません。相手方、取引の内容、やり取りの時期をそれぞれ結び付け、分かっていることと確認待ちのことを分けておくと、貸付金と未収金を取り違えずに確認を進められます。
参照先(貸付金や未収入金が、評価通達でどの債権の区分に挙げられているかを確かめる。):国税庁ホームページの「第6節 その他の財産」
SECTION 02
貸したお金について、どの取引から確認を始めるか
故人が貸したお金を調べるときは、通帳から金額を拾うだけでなく、その出金が誰とのどのやり取りに関係するのかをたどります。相手方の名前が記されたメモ、貸付けについて交わした記録、出金後のやり取りがあれば、一件ごとに対応を確かめてください。出金があったというだけで、貸付金が成立したとも、同額が残っているとも決められません。
貸した記録と返済の記録を対応させる
同じ相手方に複数回お金を渡していたように見える場合は、どの出金について、いつ、いくら返ってきたと考えているのかを分けて確認します。通帳にある相手方からの入金も、対象の貸付けが分からなければ、そのまま返済額として差し引かないでください。出金と入金の時期や、記録に残った取引の説明を照らし合わせることが、残額を考える前の手掛かりになります。
家族から聞いた内容と記録が異なるときは、どちらか一方を推測で採用せず、食い違う点を残します。相手方が分かっていても取引内容が不明なのか、取引は分かるが返済額が不明なのかを区別すれば、次に何を確認するかを絞れます。ここで行うのは税務上の金額を考えるための事実の整理であり、個別の債権の成立や帰属を決めつけるものではありません。
参照先(貸付金や未収入金が、評価通達でどの債権の区分に挙げられているかを確かめる。):国税庁ホームページの「第6節 その他の財産」
SECTION 03
未収金は、何の代金が残っているか
未収金らしい記載が見つかったら、まず「何の代金を、誰から受け取る予定だったのか」を確かめます。相手方の名前と金額だけを見て故人が貸したお金と扱うと、取引の中身を取り違えるおそれがあります。未収入金に当たるかどうかも、帳面の見出しだけではなく、個別の取引内容に沿って確認する必要があります。
代金の記録と入金を一件ずつ照らす
取引の内容が分かる記録と、通帳に残る入金を対応させ、受け取る予定だった金額のうち何を確認できたかを見ます。金額の近い入金があっても、それが同じ取引の代金とは限りません。同じ相手方とのやり取りが複数あるなら、時期や取引内容まで照らし合わせてから、未収の可能性がある金額を考えます。
財産評価基本通達204には、貸付金とともに未収入金も貸付金債権等として挙げられています。これは両者の取引内容が同じという意味ではありません。貸したお金の返済を待っているのか、別の取引の代金を待っているのかが不明なものは、無理に一方へ振り分けず、取引の内容と入金状況を確認待ちとして残してください。
参照先(貸付金や未収入金が、評価通達でどの債権の区分に挙げられているかを確かめる。):国税庁ホームページの「第6節 その他の財産」
SECTION 04
返済の記録と残額が食い違うときは何を見直すか
家族が聞いていた返済額と通帳の入金額が合わない場合は、先に「いつの、どの取引についての数字か」を見直します。貸した時期の異なるお金をまとめて考えていないか、入金日と記録された返済時期が対応しているかを確かめます。入金の記録だけを根拠に、特定の債権の返済だったと決めることは避けてください。
確認できた金額と、まだ結び付かない金額
手元にある出金、入金、やり取りの記録を一件ずつ照らしても、対象の取引が分からない入金はあり得ます。その場合は、入金自体は確認できたことと、何に対する入金かは未確認であることを分けて記録します。差額を帳尻合わせで残額に加減するより、どの数字について追加の確認が必要かを明確にするほうが、後の確認につながります。
例えば、返済の記憶はあるものの入金の記録が見つからない場合と、入金は見つかったものの返済との対応が分からない場合とでは、確認したいことが違います。故人の記録や家族が把握している経緯のうち、確かめられた部分だけを残し、不明な部分には確認先と確認予定を添えておきます。残額は、その食い違いを整理する前に推測で埋めないようにします。
SECTION 05
貸付金の元本は、利息とどう分けて考えるか
貸付金の記録を相続税の財産評価につなげるときは、「貸した金額」と「受け取る利息」を混ぜないことが大切です。財産評価基本通達204の貸付金債権等に該当する場合、その価額は元本の価額と利息の価額との合計額によって評価します。通帳に残る一つの入金額を、そのまま元本の価額や債権全体の価額と読み替えることはできません。
元本について先に確かめたいこと
まず、対象となる貸付けを特定し、貸した金額と返済に関する記録の対応を確認します。そのうえで、確認できた元本に関する情報と、まだ確認できない返済や残額を分けます。財産評価基本通達204が元本と利息を合計して評価すると定めていても、個別の元本の価額まで、その記載だけで決まるわけではありません。
利息らしい入金がある場合も、元本の返済と区別できるかを取引の記録に戻って確かめます。区別がつかないまま入金を元本だけから差し引くと、確認すべき利息の情報が見えにくくなります。どの金額が元本に関するものか、どの金額が利息に関するものかを整理し、個別の価額や評価上の例外については、必要な事実を確かめてから判断します。
参照先(貸付金債権等の評価に元本と利息の価額がどう関わるかを確かめる。):国税庁ホームページの「第6節 その他の財産」
SECTION 06
利息の記録が見つからない場合、何を確認待ちにするか
貸付けの記録は見つかっても、利息について書かれたものが見当たらないことがあります。そのときは、利息がないとも、一定額が発生しているとも推測で決めないでください。財産評価基本通達204の貸付金債権等に該当する場合は、元本の価額と利息の価額を合計して評価するため、利息について何が分かっているかを切り分ける必要があります。
分からないのは条件か、入金との対応か
まず、貸付けについて交わした記録に、利息に関する取り決めが残っているかを確認します。次に、通帳の入金や相手方とのやり取りから、利息として受け取ったと確認できる金額があるかを見ます。取り決めが分からない場合と、取り決めは分かるものの入金の内訳が分からない場合は、同じ「利息不明」でも確認待ちの内容が異なります。
元本について確認できたこと、利息について確認できたこと、それぞれの未確認事項を分けて残しておくと、入金の総額だけから評価額を決めずに済みます。個別の利息の発生や価額、評価上の例外は、手元の記録だけでは決められない場合があります。何の記録を確認済みで、次にどの取引や入金を確かめたいかを整理し、相続税の計算に用いる価額を検討する際の材料にしてください。
参照先(貸付金債権等の評価に元本と利息の価額がどう関わるかを確かめる。):国税庁ホームページの「第6節 その他の財産」
SECTION 07
相手方に確認が必要な点をどう残しておくか
食い違いは結論ではなく確認事項として残す
故人が貸したと聞いている金額と、相手方が説明する金額が違う場合は、どちらかを正しい残額として採用する前に、食い違っている点を債権ごとに分けておきます。相手方の名前、説明を聞いた日、相手方が述べた金額とその理由、手元の記録で確認できる金額を区別すると、次に何を尋ねるべきかが見えやすくなります。
例えば、入金の記録はあっても、その入金がどの貸付けに対応するか分からないなら、対応関係を確認待ちとして残します。相手方が支払い済みと説明していても、説明を聞いたことと、手元の記録で支払いを確認できたことは別です。見解の相違だけを根拠に、回収可能性や債権の法的な帰属まで決めないでください。
確認待ちの点には、誰に何を確認する予定かも添えておくと、同じ話を繰り返さずに済みます。返答が得られない点は推測の金額で埋めず、未確認のまま示せるようにしておきましょう。
SECTION 08
債権の価額は誰の課税価格の計算につながるか
債権の価額と取得した人を分けて考える
貸付金や未収金の価額を確かめても、それだけでは誰の課税価格の計算に関わるかは決まりません。相続税の一般的な計算では、財産を取得した人ごとに課税価格を計算します。債権の金額を調べる作業と、誰がその債権を取得するかの確認は分けて進める必要があります。
例えば、故人の記録に相手方の名前と金額があっても、それは取得する人を示すものとは限りません。取得者が確認できていない債権は、価額の確認状況と取得者の確認状況を別々に伝えると、金額だけが先に確定したように扱われることを避けられます。誰が取得するかは個別の事情を確認してください。
国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」で確認できるのは、相続税の計算において取得した人ごとに課税価格を求める順序です。相手方の説明や手元の入金記録だけから、取得者を決める根拠にはなりません。
参照先(確認した債権の価額を、取得した人ごとの課税価格の計算とどう結び付けるかを確かめる。):国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」
SECTION 09
各人の課税価格は相続税の総額にどう関わるか
各人の金額を確認してから合計する
相続税の総額を計算する際は、取得した人ごとに計算した課税価格を合計し、課税価格の合計額を求めます。国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」は、この合計を相続税の総額の計算段階として示しています。一つの貸付金の額と、各人の課税価格を合わせた額は同じものではありません。
そのため、故人に貸付金が一件見つかった段階で、その金額を課税価格の合計額とみなすことはできません。まず取得した人ごとの計算に関わる金額を確認し、その結果を合計するという順序を意識します。債権の残額が確認待ちなら、その点を曖昧にしたまま合計額だけを確定したものとして伝えないことも大切です。
貸付金以外にも確認中の財産があるときは、「分かっている債権の額」と「課税価格の合計額について、まだ確認が必要な点」を分けて伝えると、どの段階の金額について話しているかが明確になります。
参照先(取得した人ごとに計算した課税価格を、相続税の総額の計算でどう扱うかを確かめる。):国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」
SECTION 10
貸付金の金額に税率を直接掛けてよいか
税率を掛ける対象は債権そのものではない
貸付金の価額が分かっても、その額に相続税の税率を直接掛けて税額を出すわけではありません。相続税の一般的な計算では、まず財産を取得した人ごとに課税価格を計算します。債権の価額は、その計算を考えるための情報であり、税率を適用する金額とは区別します。
相続税の総額を算出する段階では、課税遺産総額を法定相続分で按分した「法定相続分に応ずる取得金額」に税率を適用します。国税庁ホームページの「No.4155 相続税の税率」で確認できるのは、この税率の適用先と、実際に取得した財産へ直接税率を掛けないという点です。手元の貸付金の金額から、直ちにその貸付金に対応する税額を計算しないでください。課税遺産総額から相続税の総額を求め、各人の税額に分ける計算の流れは、国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」で確認できます。
入金記録に金額が載っていると、そこへ税率を掛ければ見通しが立つように思えるかもしれません。しかし、その数字が債権の価額として確認できているかと、税率をどの金額に適用するかは別の問題です。まず金額の確認状況を明らかにし、税額の計算段階と混同しないことが重要です。
参照先(確認した債権の価額を、取得した人ごとの課税価格の計算とどう結び付けるかを確かめる。):国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」
参照先(個別の貸付金の価額に税率を直接掛ける計算ではないことを確かめる。/相続税の税率をどの段階の金額に適用するかを確かめる。):国税庁ホームページの「No.4155 相続税の税率」
SECTION 11
貸付金・未収金の相談で、確認できたことをどう伝えるか
分かっている金額と未確認の点を伝える
熊本県内で貸付金や未収金を含む相続税申告について相談するときは、債権ごとに相手方、故人の記録にある金額、確認できた入金、相手方から聞いた説明を知らせてください。残額や利息、取得する人が分からなければ、そのまま未確認と伝えることで、何から確かめるかを一緒に整理しやすくなります。
宮伸一税理士事務所ホームページの「相続税申告・生前の相続税試算」では、相続税申告と生前の相続税試算を案内し、相続税申告サービスの内容に相続財産の調査・確認を掲げています。手元の情報を伝えたうえで、評価と申告準備についてどこまで相談できるかを事務所に確認してください。
相手方との見解が違う場合は、その経緯も事実と未確認事項に分けて知らせます。税務上の金額確認と、債権の法的な帰属や回収をめぐる判断を一緒に結論付けず、まず相談したい内容を明確にしましょう。ご連絡の際は、宮伸一税理士事務所の問い合わせページからお願いします。
参照先(相続税申告について事務所が案内しているサービスの範囲を確かめる。/相続税申告の相談で、財産の調査・確認が案内されているかを確かめる。):宮伸一税理士事務所ホームページの「相続税申告・生前の相続税試算」
SECTION 12
評価を決める前に、どの不明点を残さず伝えるか
評価に使う情報と取得者の確認状況を揃える
貸付金や未収金については、存在するか、残額はいくらか、利息はあるか、誰が取得するかを、それぞれ確認できたことと確認待ちのことに分けて伝えるのが出発点です。通帳で一部の入金が見つかっても、ほかの項目まで確定したとは扱えません。金額が食い違うなら、どの記録とどの説明が一致しないのかを具体的に示します。
財産評価基本通達204の貸付金債権等に該当する場合、その価額は元本の価額と利息の価額を合わせて評価します。ただし、個別の元本・利息の価額や評価上の例外は、債権ごとの事情を確かめずに結論付けられません。国税庁ホームページの「第6節 その他の財産」にある貸付金債権の評価の記載は、元本と利息を分けて考える際の確認先です。
確認した価額を相続税の計算につなげる際も、誰が債権を取得するかを個別に確認します。相続税の一般的な計算では取得した人ごとに課税価格を求めるため、金額と取得者のどちらかが未確認なら、その点を確定事項のように扱わずに伝えてください。
参照先(貸付金債権等の評価に元本と利息の価額がどう関わるかを確かめる。):国税庁ホームページの「第6節 その他の財産」
参照先(確認した債権の価額を、取得した人ごとの課税価格の計算とどう結び付けるかを確かめる。):国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」
FAQ
よくある質問
借りた人からの入金がまだない貸付金は、相続税の計算から外してよいですか?
現時点では判断できません。入金がないことだけでは債権の内容や評価額は決まらないため、貸付けと返済の記録を照合してください。貸付金債権等に当たる場合は、元本と利息の価額を確認します。
貸付金の残額が分かれば、その金額に相続税の税率を掛けられますか?
いいえ。相続税額は、各人が実際に取得した財産の金額に直接税率を掛けて求めるものではありません。債権の評価を確認したうえで、課税価格を経て、税率を適用する金額を確かめてください。
未収金の相手方が複数いるとき、相談時には何を区別して伝えればよいですか?
相手方ごとに、どの取引の未収金か、入金について何を確認できたかを分けて伝えてください。分からない残額や利息は推測で補わず、その点も知らせると、債権ごとの評価について相談しやすくなります。
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