熊本市に関係する土地や建物を相続し、売却を考え始めたとき、「相続した日を取得日としてよいのか」「購入時の金額が分からない場合はどうするのか」と迷う方もいるでしょう。売却時の取得費は、被相続人がその土地・建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します。取得時期も、被相続人の取得時期を引き継ぎます。
まず、被相続人がいつ、どのように土地・建物を取得したかを確かめます。次に、取得費が分からない場合の取扱いや、相続人が支払った費用を条件別に確認します。相続税申告の要否を調べることと、売却時の譲渡所得を考えることは税目別に分けて考えると、相談時に確かめたい点が明確になります。
SECTION 01
相続した土地・建物を売るとき、最初に何を分けて考えるか
熊本市に関係する土地・建物を相続し、将来売ることを考えているなら、売却時の所得税に関する確認と、相続税申告の要否の確認を分けて考えることが大切です。相続した土地・建物を売る場合の取得費は、相続税のために把握した金額から決めるのではなく、亡くなった方(被相続人)が買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します。
売却時の取得費と相続税申告の要否は別の確認
一方、国税庁ホームページの「相続税の申告要否判定コーナー」は、相続財産の金額などを入力し、相続税申告のおおよその要否を確かめるためのものです。その結果だけで個別の申告要否が確定するわけではなく、売却時に使う取得費を示すものでもありません。相続税申告について調べた金額と、被相続人が土地・建物を買い入れた際の内容を混同しないよう、確かめたいことを分けておきます。
参照先(相続した土地・建物を売る場合、取得費の計算の起点を確認する。):国税庁ホームページの「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
参照先(入力による相続税申告の要否判定で確認できる範囲を確かめる。):国税庁ホームページの「相続税の申告要否判定コーナー」
SECTION 02
取得費は誰が支払った購入代金を起点にするか
相続人が買ったときの金額ではなく、被相続人の購入時から
相続した土地・建物を売る場合、所得税の譲渡所得に関する取得費は、被相続人がその土地・建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します。相続人自身がその土地・建物を買ったわけではないため、まず確認するのは被相続人の購入時の内容です。相続によって取得した際の金額だけを見ても、この起点は確かめられません。
土地と建物の両方を売る予定なら、それぞれについて、被相続人の購入代金や購入手数料などが分かっているかを確認します。金額がまだ分からない項目は推測で補わず、何を確かめる必要があるかを整理しておくと、その後の取得費の検討に役立ちます。ここで確かめるのは、売却を考えている土地・建物について、被相続人が買い入れた際の内容です。
参照先(相続した土地・建物を売る場合、取得費の計算の起点を確認する。):国税庁ホームページの「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
SECTION 03
相続人が支払った登記費用は取得費に入るか
被相続人の購入時の金額とは別に、相続人が相続による取得の際に支払った費用も確認します。業務に使われていない土地・建物であれば、その際に相続人が支払った登記費用や不動産取得税の金額は、売却時の所得税の譲渡所得に関する取得費に含まれます。相続人が支払ったというだけで一律に扱わず、土地・建物の使用状況と、何の際に支払った費用かを確かめることが必要です。
使用状況と支払いの内容を分けて確認
手元の情報は、次の点を分けて確認します。
- その土地・建物が業務に使われていなかったか。
- 登記費用や不動産取得税を相続人が相続による取得の際に支払ったか。
- 支払った費用の内容と金額を確認できるか。
ただし、取得費が分からない場合などに、売った金額の5パーセント相当額を取得費とするなら、相続人などが支払った登記費用などを取得費に含めることはできません。費用を支払ったかという確認と、どの方法で取得費を考えるかという確認を切り離さないことが大切です。
参照先(相続人が支払った登記費用や不動産取得税を取得費に含められる条件を確認する。):国税庁ホームページの「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
SECTION 04
購入時の取得費が分からない場合はどう考えるか
被相続人が土地・建物を買い入れたときの取得費が分からない場合などには、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます。これは、相続した土地・建物なら常にその割合で計算するという意味ではありません。購入時の取得費を確かめられるかどうかを確認したうえで、取得費が分からない場合などの取扱いとして考えます。
分からない金額を推測で埋めない
購入時の金額をまだ確認していない段階と、取得費が分からない場合とを同じものとして扱わないことが大切です。売却を考えている土地・建物について、取得費のどの部分が分からないのかを整理し、確認待ちの項目として残しておきます。また、5パーセント相当額を使う場合には、相続人などが支払った登記費用などを取得費に含められないため、その違いも含めて考える必要があります。
参照先(取得費が分からない場合に選べる計算方法を確認する。):国税庁ホームページの「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
SECTION 05
5パーセント相当額を使うと登記費用はどうなるか
取得費が分からない場合などに、売った金額の5パーセント相当額を取得費とするなら、相続人などが支払った登記費用などを、その取得費に加えることはできません。登記費用を支払ったことが確認できても、この方法を用いる場合は別に上乗せできないという点が重要です。費用の支払いがあったかどうかだけでなく、どの取扱いで取得費を考えているかを先に確かめます。
支払額を確認できても、概算額には加えられない
例えば、登記費用の支払いを把握している一方で、取得費が分からず5パーセント相当額を使おうとしている場合、両方を取得費として足し合わせる考え方はできません。支払額が分かることと、その金額を取得費に含められることは別です。売却時の取得費を検討する際は、5パーセント相当額を用いるのかを明らかにしてから、相続人などが支払った登記費用などの扱いを確認します。
参照先(概算による取得費を用いる場合の登記費用等の扱いを確認する。):国税庁ホームページの「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
SECTION 06
相続した日は売却時の取得時期になるか
取得費を確認した後は、売却時に用いる取得時期も確かめます。相続によって取得した土地・建物について、所得税の譲渡所得を考える際の取得時期は、相続人が相続した日を新たな起点とするのではなく、被相続人の取得時期を引き継ぎます。相続人がいつ取得したことになるかを売却時に確認したい場合は、被相続人がいつ取得したかに目を向けます。
長期・短期の判定にも被相続人の取得時期を使う
長期譲渡所得か短期譲渡所得かは、被相続人が取得した時から、相続人が譲渡した年の1月1日までの所有期間で判定します。そのため、相続した日だけが分かっていても、この判定に使う期間は確かめられません。売却する年が決まっていない段階なら、まず被相続人の取得時期を確認待ちの項目として整理し、売却時期が具体化したときに判定へつなげます。
参照先(相続した土地・建物の売却時に用いる取得時期を確認する。):国税庁ホームページの「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
SECTION 07
長期・短期の所有期間はいつまで数えるか
相続した土地・建物を売るとき、所得税の譲渡所得が長期か短期かは、被相続人が取得した時から、相続人が譲渡した年の1月1日までの所有期間で判定します。相続した日から数え始めるわけではありません。
判定の終点は売却日ではなく、その年の1月1日
売却が年の途中でも、所有期間の終点を実際の譲渡日まで延ばして考えない点が重要です。被相続人の取得日と売却する年を確認し、その年の1月1日時点までの期間で長期・短期を判断します。売却予定日だけを見て期間を数えると、判定に使う終点を取り違えます。
参照先(長期・短期の判定に使う所有期間の始点と終点を確認する。):国税庁ホームページの「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
SECTION 08
取得費と取得時期について何を確認しておくか
相続した土地・建物の売却を考えているなら、まず被相続人が取得した際の内容を確認します。所得税の譲渡所得における取得費は、被相続人の購入代金や購入手数料などを基に計算し、取得時期も被相続人の取得時期を引き継ぐためです。相続日や相続税の評価額から、取得費と取得時期を決めないようにします。
金額・日付と費用の条件を分けて確かめる
個別の土地・建物について、次の事実をそれぞれ確認します。
- 被相続人が取得した日、購入代金、購入手数料。分からない項目は推測せず、確認待ちとしておく。
- 土地・建物が業務に使われていたかどうか。相続人が取得の際に登記費用や不動産取得税を支払ったか、支払った場合はいくらか。
業務に使われていない土地・建物について、相続人が相続による取得の際に支払った登記費用や不動産取得税は、取得費に含まれます。ただし、取得費が分からない場合などに売却額の5%相当額を取得費とする取扱いを用いるときは、相続人が支払った登記費用などを重ねて含めることはできません。支払いの有無や金額が未確認なら、取得費への算入も決めずに確認します。
参照先(相続した土地・建物を売る場合、取得費の計算の起点を確認する。/相続人が支払った登記費用や不動産取得税を取得費に含められる条件を確認する。/相続した土地・建物の売却時に用いる取得時期を確認する。):国税庁ホームページの「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
SECTION 09
相続税申告の要否判定コーナーで何が分かるか
国税庁ホームページの「相続税の申告要否判定コーナー」は、相続財産の金額などを入力し、相続税申告のおおよその要否を確認するためのものです。判定結果だけで個別の申告要否が確定するものとして扱わず、入力した内容がまだ確認できていない場合も、その点を踏まえて結果を見ます。
要否の概略確認と申告書の作成は別
このコーナーで相続税申告書を作成することはできません。判定の利用と申告の説明を混同せず、令和8年分の相続税申告について確認する際は、国税庁ホームページの「相続税の申告のしかた」も参照します。そこで扱うのは相続税申告に関する説明であり、土地・建物を売る際の取得費や取得時期の判定とは別です。
参照先(入力による相続税申告の要否判定で確認できる範囲を確かめる。/要否判定と申告書作成の違いを確認する。):国税庁ホームページの「相続税の申告要否判定コーナー」
参照先(令和8年分の相続税申告について、説明が掲載されている範囲を確認する。):国税庁ホームページの「相続税の申告のしかた」
SECTION 10
令和8年分の相続税申告資料は誰の相続を対象にするか
国税庁ホームページの「相続税の申告のしかた」の令和8年分用は、令和8年4月1日現在の法令等に基づく資料です。原則として、令和8年1月1日から12月31日までの間に亡くなられた人に係る相続税申告のしかたなどを説明しています。「令和8年分」は、土地・建物を令和8年に売る人向けという意味ではありません。
相続税申告について資料を確認するときは、売却を予定する年ではなく、亡くなられた方の相続開始年と資料の対象年を照らし合わせます。亡くなられた年が令和8年以外なら、令和8年分用の説明をそのまま当てはめず、対象年に対応する資料を確認します。
参照先(相続税申告の説明が対象とする相続開始年を確認する。):国税庁ホームページの「相続税の申告のしかた」
SECTION 11
相続税の土地・家屋評価と売却時の取得費は同じか
相続税に関する土地・家屋の評価と、相続した土地・建物を売るときの取得費は、税目別に分けて考えます。国税庁ホームページの「財産評価」には、土地の評価上の区分・評価単位や、家屋の評価に関する項目が設けられています。これらは相続税に関する評価項目を確認するためのもので、被相続人の購入代金を示すものではありません。
売却時の取得費は被相続人の購入内容から
所得税の譲渡所得については、国税庁ホームページの「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」で確認します。相続した土地・建物を売った場合の取得費は、被相続人が買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します。相続税に関する土地・家屋の評価項目を確認できても、その内容を売却時の取得費として置き換えず、被相続人の取得内容を別に確かめます。
参照先(相続した土地・建物を売る場合、取得費の計算の起点を確認する。):国税庁ホームページの「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
参照先(相続税に関する土地評価で確認する項目を特定する。/相続税に関する家屋評価の項目を確認する。):国税庁ホームページの「財産評価」
SECTION 12
熊本県内で土地・建物の税務を相談する際に何を伝えるか
熊本市に関係する土地・建物を相続し、売却も考えている方は、被相続人の取得経緯や取得時期、分かっている費用、売却予定、相続税申告について確認した状況を伝えると、何から確かめたいかが明確になります。日付や金額がまだ分からないものは推測せず、確認待ちであることも伝えてください。
相続税申告と不動産手続きの相談先を分ける
宮伸一税理士事務所は熊本県内を対象地域とし、相続税申告を取扱領域としています。手元で確認できた情報を伝え、相続税申告について何を確認するか、個別の案件に対応できるかを相談できます。相続登記などの不動産手続きについては、提携する外部専門家の紹介を案内しており、税理士が登記を代行するという意味ではありません。紹介の可否も個別に確認が必要です。
相続した土地建物の取得費や取得の時期について、手元で分かっている書類や日付を整理してお伝えください。ご連絡の際は、宮伸一税理士事務所の問い合わせページからお願いします。
参照先(相続登記などの不動産手続きに関する事務所の案内範囲を確認する。):宮伸一税理士事務所ホームページの「相続税申告・生前の相続税試算」
FAQ
よくある質問
取得費が分からなければ、相続人が支払った登記費用も足せますか?
いいえ。取得費が分からない場合などに売った金額の5パーセント相当額を取得費とする取扱いを用いると、相続人などが支払った登記費用などは含められません。まず被相続人の購入時の金額を確認し、どの方法で取得費を計算するかを確かめてください。
相続してすぐ売る場合、必ず短期譲渡所得になりますか?
いいえ。相続した資産の取得時期は被相続人の取得時期を引き継ぎ、長期か短期かはその時から譲渡した年の1月1日までの所有期間で判定します。被相続人の取得時期と売却する年を確かめてください。
相続税の申告要否判定コーナーで、売却時の取得費も決まりますか?
いいえ。同コーナーは相続財産の金額などから相続税申告のおおよその要否を判定するもので、売却時の取得費を決めるものではありません。取得費については、被相続人が土地・建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを確認してください。
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宮伸一税理士事務所