熊本県内にお住まいのご家族が亡くなられ、配偶者がこれまでの住まいに住み続ける場合、建物や敷地を相続税の計算でどう扱うかが気になる方もいるでしょう。配偶者居住権等の評価では、住み続ける権利だけでなく、居住建物、敷地を使う権利、敷地そのものを分けて考えます。
まず、住まいについて誰がどの権利を持つのか、建物の一部を貸しているか、建物や敷地に共有があるかを確認します。そのうえで各価額の関係を整理し、相続税の計算に進む順序を見ていきます。住み続ける予定だけで税額を決めず、確認できた事実と確認待ちの項目を分けておくと、税理士にも状況を伝えやすくなります。
SECTION 01
配偶者が住み続ける住まいでは何を評価する?
熊本県内でご家族が亡くなり、配偶者が自宅に住み続ける場合、「自宅の評価額を一つ出せばよいのか」と迷うかもしれません。配偶者居住権等として相続税の評価を行う場面では、住み続けるという予定だけから、一つの価額を決めることはできません。まず、どの権利と財産を評価するのかを分けて考えます。
建物と敷地、それぞれの権利と財産
国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」は、評価対象として次の四つを挙げています。建物だけを見るのでも、敷地だけを見るのでもなく、建物側と敷地側にそれぞれ何があるかを確かめるための区分です。
- 配偶者居住権
- 配偶者居住権の目的となっている居住建物
- 敷地利用権
- 居住建物の敷地の用に供される土地
この区分は、個別の相続で配偶者居住権が成立したことを示すものではありません。住み続ける予定と、評価の対象となる権利があるかどうかは別の問いです。権利について確認した事実を踏まえてから、該当する対象の価額を整理します。
参照先(配偶者居住権等として評価する対象を確認できます。):国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」
SECTION 02
敷地を使う権利は、土地そのものとどう違う?
敷地利用権は、居住建物の敷地の用に供される土地を、配偶者居住権に基づいて使用する権利です。敷地そのものを指す名前ではありません。建物に住み続けるという話から敷地の価額を考えるときも、「土地」と「その土地を使う権利」を同じものとして扱わないことが出発点です。
土地を使う権利と、敷地そのものを区別する
配偶者居住権等の評価対象には、敷地利用権と、居住建物の敷地の用に供される土地の両方が挙げられています。名前は似ていても、一方は使用する権利、もう一方は敷地の土地です。敷地利用権について話しているのか、土地そのものの価額について話しているのかを分けると、確認したい内容が明確になります。
ただし、配偶者が敷地を使っているという状況だけをもって、個別の権利の帰属を決めることはできません。どの権利について確認が取れているかを確かめたうえで、その権利と敷地を区別して評価を考えます。居住建物の敷地に関する権利を扱う場合に限った整理であり、住まいに関するすべての土地利用を指す説明ではありません。
参照先(配偶者居住権等として評価する対象を確認できます。/敷地利用権が指す権利を確認できます。):国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」
SECTION 03
居住建物の価額は配偶者居住権とどう分ける?
配偶者居住権の目的となっている居住建物については、建物の相続税評価額が、そのまま差引き後の居住建物の価額になるわけではありません。まず居住建物の相続税評価額と、配偶者居住権の価額をそれぞれ確認します。両者を区別しておくことが、建物側の価額を考える前提です。
建物の評価額から権利の価額を差し引く
居住建物の価額は、居住建物の相続税評価額から配偶者居住権の価額を差し引いて求めます。ここで差し引くのは、確認した配偶者居住権の価額です。配偶者が住み続ける予定だからという理由で任意の金額を引いたり、建物の相続税評価額と配偶者居住権の価額を同じものとして扱ったりはしません。
確認するときは、「建物全体についての相続税評価額」と「そこから差し引く配偶者居住権の価額」のどちらを見ているのか、名称を分けておくと混同を防げます。配偶者居住権の価額がまだ確認できていなければ、居住建物の差引き後の価額も決められません。計算の関係を先に押さえ、個別の金額は確認済みの数値に基づいて整理します。
参照先(居住建物の価額と配偶者居住権の価額の関係を確認できます。):国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」
SECTION 04
建物の一部を貸している場合、配偶者居住権の評価は変わる?
居住建物の一部が賃貸の用に供されている場合は、配偶者居住権の価額に別の算式を用います。配偶者が生活している部分だけに目を向けて建物全体の利用状況を見落とすと、どの算式を確認すべきかを判断できません。まず、居住建物の一部を実際に貸しているかどうかを確かめます。
一部を貸しているか、利用状況から確かめる
例えば、配偶者が住む部分とは別に貸している部分があるかが、この条件に関わる確認点です。「配偶者が住み続ける家」という説明だけでは、一部賃貸の有無までは分かりません。利用している部分と貸している部分について、分かっている事実と確認待ちの事実を分けておくと、評価方法を確かめる際に役立ちます。
一部賃貸に当たる場合に確認するのは、配偶者居住権の価額の求め方です。貸している部分があるというだけで、配偶者居住権の価額や相続税の額がいくらになるかまでは決まりません。実際の利用状況を確認してから、国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」に示された該当する算式を確認します。
参照先(建物の一部を貸している場合の評価方法を確認できます。):国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」
SECTION 05
亡くなった方と配偶者が建物を共有していたら?
亡くなった方と配偶者が居住建物を共有していた場合は、「いつ共有していたか」が重要です。配偶者居住権の価額について別の算式を用いる条件は、被相続人が相続開始の直前に、その居住建物を配偶者と共有していたことです。現在の住まいの使い方だけから、相続開始直前の共有状況を判断することはできません。
確認する時点は相続開始の直前
例えば、「今は配偶者だけが住んでいる」という情報は利用状況を伝えるものですが、亡くなった方と配偶者が相続開始の直前に建物を共有していたかどうかとは別です。建物の共有について、その時点で確認できている事実を整理し、分からない点は確認待ちとして残します。住んでいる人と建物を共有していた人を混同しないことが、この条件を確認する要点です。
共有の条件に当たるときは、配偶者居住権の価額に別の算式を用います。一方、共有していたか未確認の段階では、該当する算式を決めつけられません。国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」で、この条件に対応する評価方法を、相続開始直前の事実に照らして確かめます。
参照先(相続開始直前に建物を配偶者と共有していた場合の評価方法を確認できます。):国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」
SECTION 06
敷地の価額から敷地利用権をどう切り分ける?
居住建物の敷地の用に供される土地を評価する場合は、敷地全体についての相続税評価額と、敷地利用権の価額を区別します。敷地利用権の価額を確認しないまま、敷地の相続税評価額を差引き後の土地の価額として扱うことはできません。建物側と同じく、差し引く対象の価額を先に確かめる必要があります。
敷地の評価額から敷地利用権の価額を差し引く
居住建物の敷地の用に供される土地の価額は、その土地の相続税評価額から敷地利用権の価額を差し引いて求めます。ここで用いるのは、居住建物の敷地について確認した相続税評価額と、別に確認した敷地利用権の価額です。土地の相続税評価額だけが分かっていても、差引き後の価額はまだ求められません。
金額を整理する際は、何を差し引く前の価額とし、何を敷地利用権の価額としているかを区別します。確認待ちの数値を推測で補わず、どちらの価額が未確認なのかを明らかにしておくことが大切です。この関係は、配偶者居住権の目的となっている居住建物の敷地を評価する場合のものであり、個別の敷地の価額をここから断定することはできません。
参照先(敷地の価額と敷地利用権の価額の関係を確認できます。):国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」
SECTION 07
建物の一部賃貸は敷地利用権にも影響する?
敷地の価額を考えるとき、建物の一部を貸しているかどうかも確認が必要です。居住建物の一部が賃貸の用に供されている場合、敷地利用権の価額は、その場合に示された別の算式で計算します。建物について確認した賃貸の有無を、敷地利用権の評価から切り離さないことが大切です。
例えば、配偶者が住み続ける部分のほかに貸している部分があるなら、「配偶者が住む家」という情報だけで計算方法を決めず、建物のどの部分が賃貸の用に供されているかを確かめます。貸しているかどうかが分からない部分は、賃貸があるともないとも決めつけず、利用状況を確認してから敷地利用権の計算方法を検討します。
国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」では、一部賃貸の場合に敷地利用権の価額へ用いる算式を確認できます。建物側の利用状況を確かめた後は、敷地そのものに共有がないかも別に見ておくと、評価方法に関わる条件を取り違えずに済みます。
参照先(建物の一部を貸している場合の敷地利用権の評価方法を確認できます。):国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」
SECTION 08
亡くなった方が敷地を共有していた場合は?
建物の一部賃貸とは別に、亡くなった方が敷地を他の方と共有していたかを確認します。被相続人が相続開始の直前に居住建物の敷地を他の者と共有していた場合、敷地利用権の価額には、その場合に示された別の算式を用います。敷地が共有だったというだけでなく、「誰と」「いつ」の共有だったかが判断材料です。
例えば、敷地について複数の方の名前が分かっていても、その情報だけで相続開始直前の共有関係まで確定させないでください。亡くなった方がその時点で共有していた相手を確かめ、確認できていない点はそのまま伝えられるようにしておきます。相続後に誰が敷地を取得する予定かという話とも、時点を分けて考える必要があります。
国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」では、相続開始直前に被相続人が敷地を他の者と共有していた場合の敷地利用権の計算方法を確認できます。敷地の共有を確認したら、次は居住建物についても、亡くなった方と配偶者の共有だったかを別に確かめます。
参照先(相続開始直前に敷地を共有していた場合の敷地利用権の評価方法を確認できます。):国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」
SECTION 09
建物の共有は敷地利用権の評価にも関わる?
敷地を共有していなくても、居住建物を誰が共有していたかによって、敷地利用権の評価方法に関わる場合があります。被相続人と配偶者が相続開始の直前に居住建物を共有していた場合、敷地利用権の価額には、その場合に示された別の算式を用います。配偶者が住み続ける予定というだけでは、この共有の条件を満たすとは判断できません。
建物については、亡くなった方と配偶者が相続開始直前に共有していたかを確認します。一方、敷地については、亡くなった方がその時点で他の方と共有していたかを別に確認します。建物の共有者と敷地の共有者を一緒にしてしまうと、どの条件を検討しているのかが曖昧になります。
国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」には、建物を配偶者と共有していた場合の敷地利用権の計算方法が示されています。建物と敷地のそれぞれについて、共有の相手と相続開始直前の状況を分けて把握したうえで、配偶者居住権等の価額を見ていきます。
参照先(建物を配偶者と共有していた場合の敷地利用権の評価方法を確認できます。):国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」
SECTION 10
配偶者居住権等の計算例はどこを見比べる?
計算例を見るときは、住まい全体に一つの価額が付いていると考えず、建物と敷地について示された価額を分けて見比べます。例えば、国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」には、配偶者居住権、居住建物、敷地利用権、居住建物の敷地の用に供される土地の価額をそれぞれ示した具体的な計算例があります。
計算例では、次の四つを別々の価額として確かめます。
- 配偶者居住権の価額
- 居住建物の価額
- 敷地利用権の価額
- 居住建物の敷地の用に供される土地の価額
この例は、どの価額を建物側・敷地側として区別するかを理解するためのものです。例に示された数値や権利関係を、ご自身の相続にそのまま当てはめるものではありません。個別の建物・敷地の状況と計算に必要な数値を確認してから、四つの価額を検討します。
参照先(四つの価額を分けた具体的な計算例を確認できます。):国税庁ホームページの「No.4666 配偶者居住権等の評価」
SECTION 11
評価額を相続税の計算へどう反映する?
配偶者居住権等の四つの価額を整理することと、相続税額を計算することは別の段階です。相続や遺贈などで財産を取得した人について相続税を計算する場合、まず取得した人ごとに課税価格を計算します。住まいの評価額だけを見て、各人の税額が決まるわけではありません。各人の課税価格から計算を進める順序は、国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」で確認できます。
実際の取得額と税率を掛ける金額は別
相続税の総額を計算する際、各人が実際に取得した財産の価額に税率を直接掛けるのではありません。正味の遺産額から基礎控除額を差し引いた課税遺産総額を、法定相続分によりあん分した「法定相続分に応ずる取得金額」に税率を適用します。実際に取得した価額と、相続税の税率を用いて計算する金額を混同しないことが重要です。この税率の当てはめ方は、国税庁ホームページの「No.4155 相続税の税率」で確認できます。
その後、計算した相続税の総額を、財産を取得した各人の課税価格に応じて割り振り、各人ごとの税額を求めます。つまり、取得した人ごとの課税価格を確かめる段階、法定相続分に応ずる取得金額に税率を用いて総額を求める段階、その総額を各人へ割り振る段階を分けて考えます。総額から各人の税額へ進む順序も、国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」で確認できます。
参照先(財産を取得した人ごとに課税価格を計算する順序を確認できます。/相続税の総額から各人ごとの税額を求める順序を確認できます。):国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」
参照先(法定相続分に応ずる取得金額に適用する税率の確認):国税庁ホームページの「No.4155 相続税の税率」
SECTION 12
熊本県内で配偶者居住権等の評価を相談するには?
配偶者が住み続ける家について相談するときは、住み方だけでなく、建物と敷地を誰がどのように利用し、共有していたかを伝えることが大切です。確認できた事柄と、まだ確認できていない事柄を分けておけば、配偶者居住権等の評価に必要な権利関係や数値について、何から確かめるかを相談できます。個別の権利関係や評価額は、相談時に確認します。
住まいの状況を伝えて相続税申告を相談する
宮伸一税理士事務所の対象地域は熊本県内で、取扱領域には相続税申告と生前の相続税試算が含まれます。相続税申告サービスの内容として、不動産などの評価も掲載しています。ただし、配偶者居住権等について個別の案件でどこまで対応できるかは、住まいの状況と相談したい内容を伝えて確認してください。
例えば、建物の一部を貸しているか、亡くなった方が相続開始直前に敷地を他の方と共有していたか、建物を配偶者と共有していたかについて、分かる範囲をお知らせください。確認待ちの点もそのまま伝えれば、評価と相続税申告について事務所と確認事項を整理できます。ご連絡の際は、宮伸一税理士事務所の問い合わせページからお願いします。
参照先(相続税申告サービスに含まれる評価業務を確認できます。):宮伸一税理士事務所ホームページの「相続税申告・生前の相続税試算」
FAQ
よくある質問
建物の一部を貸していても、住居部分と同じ方法で評価できますか?
いいえ。一部が賃貸の用に供されている場合、配偶者居住権と敷地利用権の価額には、それぞれ資料に示された別の算式を用います。どの部分を貸しているかを確認し、建物と敷地の双方について評価方法を確かめてください。
亡くなった方と配偶者が建物を共有していた場合、敷地側も確認が必要ですか?
はい。相続開始の直前に居住建物を配偶者と共有していた場合、その状況は配偶者居住権だけでなく敷地利用権の価額を求める方法にも関わります。建物を誰と共有していたかを確認し、敷地の共有状況とは分けて伝えてください。
配偶者居住権等の評価額が分かれば、その金額に税率を掛けて相続税額を出せますか?
いいえ。相続税額の算出では、各人が実際に取得した財産に直接税率を乗じるわけではありません。財産を取得した人ごとの課税価格を確認したうえで、法定相続分に応ずる取得金額に税率を適用する計算順序を確かめてください。
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