熊本市にお住まいのご家族が亡くなられた後、遺産の大半が自宅の土地や建物、貸している不動産で、預貯金が少ないという相続は珍しくありません。相続税の申告が必要になったとき、相続人の方が気にされるのは「納める金額を期限までに現金で用意できるか」という点です。
相続税は、金銭で期限までに一括して納めるのが原則です。そのうえで、一定の要件を満たす場合には、申請により年払いで分けて納める「延納」という制度が設けられています。ただし、延納は申告期限が近づいてから思い立っても、担保の準備や書類の作成が間に合わないことがある手続です。
この記事では、国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」、国税庁ホームページの「延納・物納申請等」、国税庁ホームページの「No.4205 相続税の申告と納税」に書かれている範囲に限って、延納の要件と期限を整理し、亡くなった日から申告期限までをどのように逆算して準備するかを考えます。
延納が認められるかどうかは個別の審査によるため、結論は税理士と一緒に確かめるものとして読み進めてください。
SECTION 01
相続税の延納の基本的な仕組み
国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」では、国税は金銭で期限までに一括納付することが原則であるとしたうえで、相続税額が10万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として、担保を提供することにより、年賦の方法(年払い)で納付することができると説明しています。これが延納であり、延納期間中は利子税の納付が必要になります。
ここで押さえておきたいのは、延納は「申請すれば分割できる」制度ではなく、「金銭で納めることが困難な金額」を限度に、担保を出して認めてもらう制度だという点です。延納できる金額には上限があり、利子税という追加の負担もあります。
延納の対象にならない税額
国税庁ホームページの「延納・物納申請等」では、相続税に附帯する加算税、延滞税及び連帯納付責任額については、延納の対象にはならないとされています。延滞税等は延納の対象になりません。延納申請書は、申告の状況に応じた延納申請期限までに提出する必要があります。期限内申告を予定する場合は、申告期限から逆算して準備します。
参照先:国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」/国税庁ホームページの「延納・物納申請等」
SECTION 02
延納を申請するための四つの要件
国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」では、次に掲げるすべての要件を満たす場合に、延納を申請することができるとされています。
- 01
相続税額が10万円を超えること
- 02
金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること
- 03
延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること
- 04
延納申請に係る相続税の納期限または納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること
三つ目の担保については、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には、担保を提供する必要はないとされています。
四つの要件のうち、計画づくりで特に時間がかかるのは二つ目と三つ目です。金銭で納めることが困難な金額を説明するには、相続人それぞれの手元資金や受け取った預貯金の状況を整理する必要があります。担保を提供するには、どの財産を担保にするかを決め、その財産に応じた書類を集めなければなりません。
参照先:国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」
SECTION 03
相続税額が10万円を超えれば延納できますか
いいえ。国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」では、延納を申請できるのは四つの要件をすべて満たす場合とされています。相続税額が10万円を超えることは要件の一つにすぎません。
延納できるのは、金銭で納付することを困難とする金額の範囲内に限られます。相続した預貯金や相続人の手元資金でどこまで納められるかを整理しないと、延納を申請できる金額の見当もつきません。担保の提供や、期限までの申請書と担保提供関係書類の提出も欠かせません。
延納が認められるかどうかは、申請後に税務署長が要件を調査したうえで判断します。手元資金の状況や相続した財産の内容によって結論が変わるため、「延納できるはず」と決めて納付資金の準備をやめてしまうのは避けたいところです。延納を前提に計画を立てる前に、税理士と一緒に要件への当てはまりを確かめてください。
参照先:国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」
SECTION 04
計画の起点になる申告期限と延納申請期限
逆算の起点は、相続税の申告期限です。国税庁ホームページの「No.4205 相続税の申告と納税」では、相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に行うことになっているとされ、1月6日に死亡した場合にはその年の11月6日が申告期限になるという例が示されています。期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、その翌日が期限とみなされます。同じページでは、相続税の納税も申告期限までに行うことになっているとされています。
延納申請の期限は、この納期限と結び付いています。国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」では、延納申請期限について次のように整理されています。
- 01
期限内申告の場合
申告期限
- 02
更正または決定の場合
その通知が発せられた日の翌日から起算して1か月を経過する日
- 03
期限後申告または修正申告の場合
申告書の提出の日
期限内に申告する場合、延納申請書と担保提供関係書類は、申告期限までに提出する必要があるということです。申告書の作成と、延納申請の準備は同じ締切りに向かって並行して進めることになります。
参照先:国税庁ホームページの「No.4205 相続税の申告と納税」/国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」
SECTION 05
亡くなった日から申告期限までを逆算した準備の順序
延納の検討には、相続税がいくらになりそうか、そのうち手元の資金でいくら納められるかという見通しが欠かせません。そのため、準備は次の順に進めると、申告期限の直前に慌てることが少なくなります。
- 01
相続人と遺産の全体像をつかみ、相続税の申告が必要かどうかを確かめる
- 02
相続税額の見込みを出し、相続人ごとの納付額の見当をつける
- 03
相続人それぞれの手元資金と、相続で受け取る預貯金を確かめ、金銭で納めることが難しい金額があるかを見極める
- 04
延納を申請する場合に担保とする財産の候補を決め、必要な書類を確かめる
- 05
申告書、延納申請書、担保提供関係書類を申告期限までにそろえて提出する
10か月を三つの段階に分けて考える
たとえば、最初の数か月を遺産と相続人の把握に、中盤を税額の見込みと納付資金の検討に、最後の数か月を担保の準備と書類作成に充てる、というように段階を分けて考えると、どの作業がいつまでに必要かが見えやすくなります。担保に不動産を考える場合は、どの財産を候補にするかを相続人の間で話し合う時間も見込み、早めに候補を挙げておくと安心です。
遺産分割の話し合いが長引くと、誰がどの財産を取得し、誰がいくら納めるのかが決まらず、延納の検討も進みにくくなります。分割の見通しが立たない場合の進め方も含めて、早い段階で税理士に相談しておくことをおすすめします。
参照先:国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」
SECTION 06
担保に提供できる財産と担保が要らない場合
国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」では、延納の担保として提供できる財産の種類は、次に掲げるものに限られるとされています。
- 01
国債および地方債
- 02
社債その他の有価証券で税務署長等が確実と認めるもの
- 03
土地
- 04
建物、立木、登記される船舶などで、保険に附したもの
- 05
鉄道財団、工場財団など
- 06
税務署長等が確実と認める保証人の保証
同じページでは、相続または遺贈により取得した財産に限らず、相続人の固有の財産や共同相続人または第三者が所有している財産であっても担保として提供することができるとされています。また、税務署長が延納の許可をする場合に、提供する担保が適当でないと認めるときには、その変更を求めることとなると書かれています。
担保の提供が不要になる条件
延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には、担保を提供する必要はありません。二つの条件の両方を満たすことが必要です。延納税額が100万円以下でも、延納期間を3年より長くする場合は担保が必要になるため、延納期間の考え方とあわせて確かめておきます。
参照先:国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」
SECTION 07
担保提供関係書類が期限に間に合わないときの延長
国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」では、延納申請期限までに延納申請書に担保提供関係書類を添付して提出する必要があるとしたうえで、延納申請期限までに担保提供関係書類を提供することができない場合は、担保提供関係書類提出期限延長届出書を提出することにより、1回につき3か月を限度として、最長6か月まで担保提供関係書類の提出期限を延長することができるとされています。
この延長は、担保提供関係書類の提出期限についての取扱いです。延納申請書そのものは、延納申請期限までに提出することが必要です。
延長届出を前提に計画を組まない理由
延長の仕組みがあるからといって、担保の準備を後回しにしてよいわけではありません。延長には届出が必要で、延長できる期間にも上限があります。担保とする財産の書類集めに時間がかかる場合の備えとして知っておき、計画そのものは申告期限までに書類をそろえる前提で組んでおくと、想定外の遅れが生じたときにも対応の余地が残ります。
参照先:国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」
SECTION 08
延納期間と利子税の割合の目安
国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」では、延納のできる期間と利子税の割合は、その人の相続税額の基礎となった財産の価額の合計額のうちに占める不動産等の価額の割合によって、おおむね表のようになるとされています。主な区分は次のとおりです。
- 01
不動産等の割合が75%以上の場合/不動産等に係る延納相続税額(森林計画立木に係るものを除く)
延納期間は最高20年、延納利子税割合は年3.6%、特例割合は0.6%
- 02
不動産等の割合が75%以上の場合/動産等に係る延納相続税額
最高10年、年5.4%、特例割合0.9%
- 03
不動産等の割合が50%以上75%未満の場合/不動産等に係る延納相続税額(森林計画立木に係るものを除く)
最高15年、年3.6%、特例割合0.6%
- 04
不動産等の割合が50%未満の場合/一般の延納相続税額
最高5年、年6.0%、特例割合1.0%
このほか、立木や特別緑地保全地区等内の土地、森林計画立木に係る区分も設けられています。
特例割合が変わる可能性
同じページでは、各年の延納特例基準割合が7.3パーセントに満たない場合には、算式により計算される特例割合が適用されるとされています。表の特例割合は、令和8年1月1日現在の延納特例基準割合1.3パーセントで計算したもので、延納特例基準割合が変更された場合には変動するため、延納申請に際し所轄税務署で確認するよう案内されています。延納期間を長くすれば一回あたりの納付額は小さくなりますが、利子税の負担は期間に応じて生じます。期間の選び方は、納付資金の見通しとあわせて検討します。
参照先:国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」
SECTION 09
申請してから許可・却下までの期間と延納後の変更
国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」では、延納申請書が提出された場合、税務署長は、延納申請に係る要件の調査結果に基づいて、延納申請期限から3か月以内に許可または却下を行うとされています。延納担保などの状況によっては、許可または却下までの期間を最長で6か月まで延長する場合があるとも書かれています。
つまり、申告期限に申請を済ませても、結論が出るのはその後になります。却下された場合に備えて、納付資金を別の方法で用意できるかどうかも、計画の段階で考えておく必要があります。
延納から物納へ変更できる特定物納
同じページでは、延納の許可を受けた相続税額について、その後に延納条件を履行することが困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、分納期限が未到来の税額部分について、延納から物納への変更を行うことができ、これを特定物納というと説明されています。物納は、国税庁ホームページの「延納・物納申請等」で、延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合に、一定の相続財産で納付することが認められる制度として案内されています。
なお、国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」では、担保提供関係書類の提出期限の延長、許可までの審査期間、特定物納についての記載は、平成18年4月1日以後の相続開始により財産を取得した場合に適用されるとされています。この記事は、平成18年4月1日以後に開始した相続を前提に整理しています。平成18年3月31日以前の相続開始については改正前の相続税法が適用され、これらの取扱いはありません。
参照先:国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」/国税庁ホームページの「延納・物納申請等」
SECTION 10
相続が始まった日で変わる手引と令和7年度の改正
国税庁ホームページの「延納・物納申請等」では、令和7年度税制改正により、延納許可限度額及び物納許可限度額の計算方法の改正が行われたとされています。この改正は、令和7年4月1日以降相続開始分に係る相続税の延納申請から適用されると書かれています。
同じページには、「相続税・贈与税の延納の手引」が相続開始の時期ごとに分けて掲載されています。令和7年4月1日以後に相続開始により財産を取得された方向けのもの、平成18年4月1日以後の相続開始分のもの、平成18年3月31日以前の相続開始分のもの、という区分です。どの手引を見ればよいかは、亡くなった日によって決まります。
延納許可限度額は改正の前後で計算方法が異なるため、改正前の資料や解説をもとに見込みを立てると、適用される時期の取扱いと食い違うおそれがあります。延納許可限度額の見込みは、亡くなった日に対応する手引に沿って、税理士と一緒に確かめてください。
参照先:国税庁ホームページの「延納・物納申請等」
SECTION 11
延納を検討する相続税申告の相談で伝えたい財産と納付資金の状況
延納を含めて相続税の納め方を相談する際は、税額の見込みと、金銭で納められる金額を比べられる情報があると、要件に当てはまる可能性を早く確かめられます。次のような情報を、分かる範囲で伝えてください。
- 01
亡くなった日と、相続人の構成
- 02
遺産に含まれる土地・建物の所在と利用状況(自宅、貸家、駐車場など)
- 03
相続で受け取る預貯金や有価証券のおおよその金額
- 04
相続人それぞれの手元資金と、相続税の納付に充てられる見込みの金額
- 05
担保として考えられる財産と、その登記や共有者の状況
- 06
遺産分割の話し合いの進み具合
相続税額がまだ分からない段階でも、相談はできます。どの資料をいつまでに集め、延納を検討するかどうかをどの時点で判断するかを、申告期限から逆算して一緒に組み立てることが相談の目的です。ご連絡の際は、宮伸一税理士事務所の問い合わせページからお願いします。
参照先:宮伸一税理士事務所ホームページの「相続税申告・生前の相続税試算」
SECTION 12
まとめ:延納は申告期限から逆算して早めに検討を始める
相続税の延納は、相続税額が10万円を超え、金銭で納めることが困難な事由がある場合に、その困難な金額を限度として、担保を提供して年払いで納める制度です。期限内申告の場合、延納申請書と担保提供関係書類は申告期限までに提出する必要があり、申告期限は亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
遺産と相続人の把握、税額の見込み、納付資金の検討、担保の準備という順序を、申告期限から逆算して並べておくと、延納を使うかどうかの判断を落ち着いて行えます。延納期間と利子税、許可までの期間、相続開始日で変わる手引の違いも、計画に織り込んでおきたい点です。
宮伸一税理士事務所の相続税申告のご相談について
宮伸一税理士事務所では、熊本県内のお客様を対象に、相続税申告と生前の相続税試算のご相談をお受けしており、所長税理士が直接担当します。延納を含めた納付の方法をどのように進められるかは、財産の内容と納付資金の状況を確認したうえでご案内します。相続税の納め方に不安をお持ちの相続人の方は、相続のページで事務所の対応をご確認ください。
参照先:宮伸一税理士事務所ホームページの「相続税申告・生前の相続税試算」
FAQ
よくある質問
延納を申請すれば、延滞税や加算税も分けて納められますか
いいえ。国税庁ホームページの「延納・物納申請等」では、相続税に附帯する加算税、延滞税及び連帯納付責任額については、延納の対象にはならないとされています。
延納の担保は、相続した財産でなければいけませんか
いいえ。国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」では、相続人の固有の財産や共同相続人または第三者が所有している財産であっても担保として提供することができるとされています。提供できる財産の種類は限られています。
延納申請をした後、どのくらいで結果が出ますか
国税庁ホームページの「No.4211 相続税の延納」では、税務署長は延納申請期限から3か月以内に許可または却下を行うとされ、延納担保などの状況によっては最長で6か月まで延長する場合があるとされています。
運営者
宮伸一税理士事務所