熊本県内で法人を経営している方の帳簿に、役員借入金や役員貸付金が残っている場合、その金額だけを見ても、いつ、誰が、何のために資金を動かしたかは分かりません。通帳の入出金、仕訳、領収書や請求書などを取引ごとに照らすと、確認済みの事実と、役員への貸付条件など確認が必要な点を分けやすくなります。
法人から役員等へ無利息または低率で金銭を貸し付けた場合や、役員等に対する債権を放棄した場合には、法人税上の経済的利益が問題となることがあります。ただし、帳簿上の科目名だけで個別の税務上の扱いは決まりません。決算申告に向けて、残高を構成する取引と手元の資料を確かめ、説明できない入出金は確認先とともに整理しておきましょう。
SECTION 01
役員借入金と役員貸付金を、誰との資金移動として確認するか
役員借入金や役員貸付金の残高を見つけたら、まず法人と役員のどちらが資金を出したのかを確認します。科目名は帳簿上の整理を示しますが、それだけで個々の入出金の相手や理由まで確定するものではありません。同じ役員との取引でも、法人が受け取った資金と法人が支払った資金を混同せず、発生した取引ごとに確かめることが大切です。
例えば、役員から法人の口座へ入金された記録があれば、誰が振り込み、法人が何のために受け取り、返す予定の資金なのかを確かめます。反対に、法人の口座から役員へ送金されていれば、送金の目的と返済の取り決めを確認します。入金と出金が後日相殺されたように見えても、別々の取引であれば、発生した順に内容を追う必要があります。
担当者の説明と帳簿の科目名が異なるときは、どちらかを先に正しいと決めず、振込記録や当時のやり取りなど、資金の向きを説明できる資料を集めます。相手が役員本人なのか、別の支払先なのかも区別しておくと、次に残高の増減を調べる際、確認すべき入出金を絞れます。
SECTION 02
帳簿の残高をどの入出金で説明できるか
帳簿の期末残高は一つの金額でも、その内訳には以前から残る分と当期に発生した分が含まれます。まず期首残高を出発点に、当期の増加と減少を取引ごとに追い、期末残高までつながるかを確かめます。残高が一致しているだけでは、各入出金の相手や目的まで確認できたことにはなりません。
役員との資金移動が複数回ある場合は、それぞれの日付、金額、帳簿上の増減を見比べます。返済として記録された金額がどの入金または出金に対応するのかを確かめ、別の支払いを返済と取り違えていないかも確認します。前期から持ち越した金額については、当期の入出金だけを足し引きしても発生時の理由は分からないため、過去の記録も確認対象として分けておきます。
計算上の差額が出たときは、理由を推測して取引を追加したり、科目を決め直したりしないことが重要です。どの期間のどの取引がつながらないのか、確認待ちの項目として残し、帳簿の入力担当者や当時の資金移動を把握する人など、確認先を記録します。こうして残高の問題と個々の取引内容の問題を分けると、次に照らすべき記録が明確になります。
SECTION 03
通帳と仕訳が一致しないとき、何を確かめるか
残高の増減を確認したら、法人の通帳や振込記録と仕訳を取引単位で照らします。同じ金額が見つかっても、それだけで対応する取引とは決められません。入出金日、金額、振込元・振込先、通帳の記載と仕訳の摘要を合わせて見て、記録が指している支払いを確かめます。
例えば、仕訳には役員への支払いと記されているのに、通帳上の振込先が別の名義なら、誰への何の支払いだったかを確認します。反対に、振込先が役員名義でも、その名義だけで貸付けや立替金の精算と決めることはできません。仕訳の説明と入出金の相手が食い違う場合は、振込時の依頼内容や支払いの目的を確認できる記録を探します。
日付や金額にずれがある取引は、似た金額の別取引を無理に対応させず、どの記録まで照合できたかを残します。振込元が確認できない入金や、摘要だけでは内容が分からない出金も同様です。確認できない点と、役員・経理担当者など誰に尋ねるかを記録しておけば、通帳上の動きと仕訳の対応を後から確かめられます。
SECTION 04
役員が立て替えた支払いは、どの資料で内容を確認するか
役員がいったん支払ったという説明を受けた場合、法人から役員へ資金を渡した記録だけでは、その支払いが法人のためのものか分かりません。領収書や請求書で支払先と購入・利用した内容を確かめ、役員の支払記録と法人から役員への精算記録がどの支払いに対応するかを見ます。支払先の名称だけで判断せず、何のための支払いだったかを分けて確認します。
一件の精算に複数の支払いが含まれていれば、それぞれの証憑を見て、法人の支出として説明できるものと役員等の個人的費用に当たる可能性があるものを区別します。証憑が見当たらない支払いは、用途を推測で補わず、何が未確認かを残します。役員が先に払ったという事実と、最終的に法人が負担すべき支払いかどうかは、別の問いです。
法人が役員等の個人的費用を負担した額は、法人税上、役員等への経済的利益の例に挙げられています。ただし、法人から役員へ支払ったというだけで、個人的費用の負担と断定はできません。支払いの内容と負担した人を証憑で確かめたうえで、法人税上の扱いを検討します。
参照先(法人が負担した役員等の個人的費用の扱いを確認できます。):国税庁ホームページの「No.5202 役員等に対する経済的利益」
SECTION 05
法人から役員等への貸付条件は何を確認するか
法人から役員等への金銭の貸付けがある場合は、帳簿に貸付金が残っていることと、貸付時の条件を分けて確認します。貸付日と金額、法人からの送金、役員等からの返済を追い、利息についてどのような取り決めがあったかを確かめます。返済の記録があっても、それだけでは利息の取り決めや実際の徴収額まで分かりません。
無利息または低率で貸し付けた場合、法人税上の経済的利益を考える際には、通常取得すべき利率で計算した利息の額と、実際に徴収した利息の額との差額が確認点になります。契約上の記載だけでなく、利息を実際に受け取った記録があるかも照らします。通常取得すべき利率は、資料を確かめずに一律の数字を当てはめて決めるものではありません。
貸付けの条件が分かる記録と入出金の記録がそろわないときは、貸付日や利息の取り決めなど、どの点が未確認かを区別します。残高だけから無利息と判断したり、返済がない期間を見て直ちに別の取扱いを決めたりせず、確認できた条件に基づいて検討します。次に、返済されていないことと、法人が返済を求める債権を放棄したことも分けて確かめます。
参照先(無利息・低率の役員等への貸付けについて、利息の差額を確認する理由が分かります。):国税庁ホームページの「No.5202 役員等に対する経済的利益」
SECTION 06
返済されていない残高と債権放棄をどう区別するか
役員等への貸付残高が返済されずに残っていても、その事実だけで法人が債権を放棄したとはいえません。まず、いつ貸し付け、どの返済が記録され、いくらが残っているのかを確かめます。そのうえで、法人が役員等に対して有する債権について、放棄または免除した事実があるかを別に確認します。
未返済の理由が分からないときは、返済に関するやり取りと、放棄・免除についてのやり取りを混ぜずに確認します。帳簿から残高がなくなっている場合も、記録上の処理だけを見て債権放棄と決めず、どの取引や意思表示を反映したのかを確かめます。反対に、残高が帳簿に残っている場合も、実際のやり取りを確認せずに結論を出すことは避けます。
法人が役員等に対して有する債権を放棄または免除した場合、その債権の額は法人税上の経済的利益の例に挙げられています。ただし、所得税法上経済的利益として課税されず、かつ法人が役員等への給与として経理しなかった場合は、給与として扱われません。放棄・免除の有無だけで給与の扱いまで断定せず、この条件も確認します。
参照先(役員等への債権放棄・免除が経済的利益の例に当たるか確認できます。):国税庁ホームページの「No.5202 役員等に対する経済的利益」
SECTION 07
役員等への経済的利益は、どの取引で問題になるか
役員との資金移動では、現金を渡したかどうかだけでなく、法人の負担によって誰が利益を受けたかも確かめます。法人が役員または特殊関係使用人に与える利益には、金銭の支給のほか、債務の免除など、実質的に給与を支給したのと同様の経済的効果をもたらすものが含まれます。
法人が負担した費用の受け手を確かめる
例えば、法人が支払った費用について、請求書の宛名だけでなく、何のための支出で、実際には誰のために使われたかを確認します。役員等の個人的費用を法人が負担した額は、経済的利益の例です。帳簿に費用として記載されていても、その科目名だけで法人の業務上の支出とも、役員等への給与とも決められません。
ただし、明らかに株主等の地位に基づいて取得したと認められるものや、病気見舞・災害見舞などの純然たる贈与と認められるものは、この経済的利益の説明から除かれます。また、所得税法上経済的利益として課税されず、法人も役員等への給与として経理していない場合は、給与として扱われません。支出の目的、受け手、経理の内容を取引ごとに確かめる必要があります。
参照先(法人が役員等へ与えた利益に含まれるものを確認できます。/法人が負担した役員等の個人的費用の扱いを確認できます。):国税庁ホームページの「No.5202 役員等に対する経済的利益」
SECTION 08
毎月の経済的利益は、定期同額給与の条件に関わるか
役員に対する経済的利益が一度限りではなく続いている場合、次に確かめたいのは供与の頻度と各月の額です。法人税上、役員へ継続的に供与される経済的利益のうち、その額が毎月おおむね一定のものは定期同額給与に該当し、損金の額に算入されます。継続しているというだけでは、毎月の額についての条件を満たしたことにはなりません。
支出日だけでなく、利益が生じた月と額を見る
同じ種類の負担が毎月記帳されていても、各月に役員が受けた利益の額まで同じとは限りません。取引の記録と金額の分かる資料を月ごとに対応させ、いつから継続し、各月の額がおおむね一定かを確かめます。記帳がまとめて行われている場合も、帳簿の記載日だけから利益の発生頻度を決めないことが大切です。
毎月おおむね一定でないものは定期同額給与に該当せず、損金の額に算入されません。また、役員への経済的利益が不相当に高額な場合や、法人が事実を隠蔽・仮装して経理した場合も損金の額に算入されません。毎月同じ科目で処理したという説明だけで結論を出さず、利益の内容と額、経理の実態を照らし合わせます。
参照先(継続的な経済的利益と定期同額給与の関係を確認できます。):国税庁ホームページの「No.5202 役員等に対する経済的利益」
SECTION 09
決算申告前にどの申告資料を確認するか
取引ごとの確認結果を決算申告に結び付ける際は、法人税の一般的な取扱いを調べることと、申告書類を確認することを分けて考えます。国税庁ホームページの「法人税」は、一般的な取扱いを調べるタックスアンサーなどへの入口です。役員との資金移動について、確認した事実に関係する取扱いを探すときに参照できます。
申告書類は、取引の確認結果と照らす
国税庁ホームページの「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税」には、法人税申告書別表等やパンフレット・手引き、改正の概要への案内があります。決算時には、帳簿で把握した残高と、入出金や費用負担について確認できた内容を用意したうえで、申告書類や手引きを確認します。一般的な取扱いを調べる入口と、申告書類を探す案内とでは、確かめられることが異なります。
例えば、残高の内訳に説明できない入金があるなら、申告書の記載箇所を先に決めるのではなく、その入金の相手と目的を確かめます。資料から取引内容を確認できても、それだけで個別の別表の記載箇所や調整額が決まるわけではありません。確認できた事実と、申告への反映についてなお判断が必要な点を分けておくと、決算資料との照合がしやすくなります。
参照先(法人税の一般的な取扱いを確認する入口を探せます。):国税庁ホームページの「法人税」
参照先(法人税の申告書別表等と申告の手引きを確認できます。):国税庁ホームページの「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税」
SECTION 10
資料が足りない取引は何を確認待ちにするか
残高の中に説明しきれない入出金があっても、役員からの借入れや役員への貸付けだったと推測で確定しないことが大切です。まず、通帳の動きや帳簿の記録で確かめられることと、当事者から聞いただけのことを分けます。資料がない部分は空白を埋めるのではなく、確認待ちの項目として残します。
取引を特定するための確認事項
- 日時と金額:いつ入出金があり、帳簿のどの記録に対応するか。
- 相手と目的:誰との資金移動で、何のための支払い・受取りだったか。
- 条件とその後の動き:返済について伝えられた内容と、後の入出金との対応を確かめられるか。
- 確認先:不足する資料はどこにあり、誰に何を確認する予定か。
一枚の資料に複数の取引が載っている場合は、それぞれの日時・金額と資料のどの記載が対応するかを確かめます。逆に、同じ資料を別々の取引の根拠として使うなら、双方を裏付ける内容があるかを確認します。聞き取りだけで分かった目的や条件はその旨を残し、資料で確認できた取引と混ぜずに整理しておくと、次に何を尋ねるべきかが明確になります。
SECTION 11
熊本県内で役員との資金移動を相談するとき、何を伝えるか
熊本県内で法人を経営・経理し、役員借入金や役員貸付金の残高について相談するときは、帳簿の残高だけでなく、分かっている取引と確認待ちの取引を知らせてください。通帳や契約に関する資料、返済や費用負担の記録の所在、どこまで記帳できているかも伝えると、何から確かめるかを事務所と一緒に整理できます。宮伸一税理士事務所の対象地域は熊本県内です。
記帳の相談と申告の相談を分けて伝える
同事務所の取扱領域には、法人・個人事業主の顧問、決算申告、確定申告、年末調整があります。顧問業務では記帳代行、記帳指導、税務上のアドバイスが案内されています。役員との資金移動について日々の記帳を相談したいのか、決算申告前に取引内容と帳簿を照らしたいのかを伝えると、相談したい内容を区別できます。
決算申告については、決算書の作成から申告書の作成・提出までの業務が案内されています。ただし、個別の取引の税務上の結論や、今回の相談でどの業務を依頼できるかは、この案内だけでは決まりません。資料と記帳状況を確認した後に、対応の可否と範囲について案内を受ける形です。ご連絡の際は、宮伸一税理士事務所の問い合わせページからお願いします。
参照先(記帳状況について相談できる業務を確認できます。/決算申告について案内されている業務範囲を確認できます。):宮伸一税理士事務所ホームページの「法人・個人事業主様向け 顧問業務・決算申告」
SECTION 12
役員借入金と役員貸付金の整理で、結論前に何を確かめるか
役員との資金移動を整理するときは、残高の名称より先に、お金が法人へ入ったのか、法人から出たのかを取引ごとに確かめます。続いて、通帳や帳簿などで日時・相手・目的を照らし、貸付けであれば利息の条件と実際の徴収状況を確認します。説明がつかない動きは結論を急がず、資料で分かったことと確認待ちのことを分けておきます。
法人から役員等へ利益が渡っていないか
法人が役員または特殊関係使用人へ利益を与える取引では、金銭の支給以外も法人税上の検討対象になります。法人が役員等に対して有する債権を放棄・免除した場合、その債権の額は経済的利益の例です。一方、帳簿上の残高が減ったというだけで、実際に債権を放棄したと決めることはできません。何が起きたかを示す資料を先に確かめます。
法人が役員等へ無利息または低率で貸し付けた場合には、通常取得すべき利率で計算した利息と、実際に徴収した利息との差額も経済的利益の例です。ただし、個別の貸付条件や通常取得すべき利率が分からないまま、差額や税務上の結論は出せません。また、所得税法上経済的利益として課税されず、法人も役員等への給与として経理していない場合は、給与として扱われません。
手元にある契約に関する資料や入出金の記録、まだ確かめられていない条件を伝えれば、どの事実から確認するかを事務所と一緒に整理できます。勘定科目だけで判断せず、確認できた取引内容を基に法人税上の扱いを検討することが、結論を急がないための順序です。
参照先(法人が役員等へ与えた利益に含まれるものを確認できます。/役員等への債権放棄・免除が経済的利益の例に当たるか確認できます。/無利息・低率の役員等への貸付けについて、利息の差額を確認する理由が分かります。):国税庁ホームページの「No.5202 役員等に対する経済的利益」
FAQ
よくある質問
役員貸付金の残高があれば、無利息分を直ちに給与として計上する必要がありますか。
現時点では判断できません。法人が役員等へ無利息または低率で貸し付けた場合、通常取得すべき利率による利息と実際に徴収した利息との差額が経済的利益の例に挙げられています。まず貸付条件と利息の徴収記録を確認してください。
役員から返済がないだけで、法人が債権を放棄したことになりますか。
いいえ、未返済という事実だけでは債権放棄の有無は決まりません。法人が役員等に対する債権を放棄または免除した場合は経済的利益の例に挙げられるため、返済記録と放棄・免除に関する資料を分けて確認してください。
決算申告の相談では、記帳状況も伝えたほうがよいですか。
はい。宮伸一税理士事務所は記帳指導や決算申告を案内しているため、現在の帳簿、入出金記録、確認できない取引を伝えると、相談内容を具体的にできます。対応できる範囲は資料や記帳状況を確認したうえで確かめてください。
運営者
宮伸一税理士事務所