熊本市にお住まいのご家族が亡くなられた後、相続する宅地に傾斜やがけがあると、土地の価額をどう考えればよいか迷うことがあります。見た目の傾斜だけで評価方法を決める前に、宅地の形状、道路との関係、がけ地などに当たる部分とその利用状況を確かめることが大切です。
相続税の評価では、不整形地やがけ地など、土地の状態に応じた取扱いが定められています。ただし、どの取扱いが当てはまるかは宅地ごとの事実関係で変わります。まず確認できていることと確認待ちのことを分け、評価額を検討したうえで、相続税の計算や申告準備について税理士に相談する流れを見ていきます。
SECTION 01
傾斜のある宅地は、最初に何を見分けるか
熊本市にある宅地を相続し、敷地内に傾斜やがけが見える場合でも、見た目だけで相続税評価の方法や評価額は決まりません。まずは宅地ごとに、土地全体の形、道路との接し方、実際の利用状況を分けて確かめます。平らに使っている部分と傾斜のある部分がどこにあるかも、土地全体を一括りにせず確認したい点です。
形状・接道・利用状況を分けて見る
輪郭が複雑な宅地なら、不整形地の取扱いを検討する余地があります。ただし、その取扱いでは形の複雑さだけでなく、位置や地積、地区区分と地積区分も関わります。傾斜があることと、不整形地に該当することを同じ判断として扱わないようにします。
宮伸一税理士事務所は、土地評価の相談で接道・形状・利用状況・法的制限による補正項目を確認すると案内しています。相談する際は、見えている傾斜の場所に加え、土地の輪郭と道路に接する場所、現在の使い方について、分かっていることと確認できていないことを分けて伝えると、どの状態から確かめるかを話し合いやすくなります。熊本市内にあるというだけで、土地の形や評価上の取扱いを推測することはできません。
参照先(不整形地の評価方法と補正率を選ぶ際の条件を確認できます。):国税庁ホームページの「財産評価基本通達(不整形地・間口が狭小な宅地等・がけ地等・土砂災害特別警戒区域内・容積率の異なる地域にわたる宅地の評価ほか)」
参照先(土地評価の相談で確認する状態や制限を確認できます。):宮伸一税理士事務所ホームページの「相続税申告・生前の相続税試算」
SECTION 02
土地の形が複雑な場合、どこを確かめるか
宅地の外形に凹凸があるときは、傾斜の強さより先に、どこまでが評価する宅地の輪郭なのかを確かめます。輪郭が分からなければ、形がどの程度複雑か、宅地全体の中でどの部分が張り出しているかを捉えにくいためです。隣の土地や道路を含めて形を見ていないかも、区別する必要があります。
輪郭だけで補正率を決めない
不整形地の取扱いに該当する宅地の価額は、定められた方法で計算した価額に、不整形の程度、位置、地積などに応じた不整形地補正率を乗じて評価します。補正率には地区区分と地積区分が関わるため、形だけを見て一律に選ぶことはできません。位置や地積を含めて宅地ごとに確認し、そのうえで不整形地として検討するかを判断します。
土地の輪郭を確かめる場面では、道路に向いた部分と奥に広がる部分の位置関係も見ておくと、次に間口と奥行を検討する際の前提を整理できます。一方、輪郭が複雑に見えることだけでは、特定の評価方法や補正率、評価額までは確定しません。
参照先(不整形地の評価方法と補正率を選ぶ際の条件を確認できます。):国税庁ホームページの「財産評価基本通達(不整形地・間口が狭小な宅地等・がけ地等・土砂災害特別警戒区域内・容積率の異なる地域にわたる宅地の評価ほか)」
SECTION 03
間口と奥行は、評価方法の選択にどう関わるか
不整形地に該当する宅地の計算方法には、宅地の地積を間口距離で除して「計算上の奥行距離」を求め、それを基に整形地として計算する方法があります。ここで間口を確かめるのは、道路に接する幅が計算上の奥行距離に直接関わるためです。土地の奥まで目で見て測った距離を、そのままこの計算に用いるわけではありません。
計算上の距離には上限がある
この方法では、地積を間口距離で除した値を無条件に奥行距離とすることもできません。不整形地の全域を囲み、正面路線に面する長方形または正方形の土地を「想定整形地」といい、計算上の奥行距離はその想定整形地の奥行距離が限度です。間口だけでなく、宅地全体を囲む形も確かめる理由はここにあります。
たとえば道路側が狭く、奥に向かって広がるように見える土地でも、外形と間口距離を確認しないまま計算結果を見込むことはできません。まず、どの部分を間口として捉えるか、宅地全体を囲む想定整形地をどう置くかを確認し、この方法を検討できる状態にします。個別の寸法が分からない段階で、奥行距離や評価額を決めないことが大切です。
参照先(間口距離と奥行距離を用いる評価方法の条件を確認できます。):国税庁ホームページの「財産評価基本通達(不整形地・間口が狭小な宅地等・がけ地等・土砂災害特別警戒区域内・容積率の異なる地域にわたる宅地の評価ほか)」
SECTION 04
土地の形に近い整形地は、どう設定するか
不整形地に該当する宅地には、土地の形に近い整形地を設定し、その整形地を基に計算する方法もあります。このとき使う「近似整形地」は、土地に適当な四角形を重ねればよいというものではありません。実際の宅地の輪郭と、設定した整形地の輪郭がどこでずれるかを確かめます。
輪郭の内側と外側を見比べる
設定する際は、近似整形地からはみ出す実際の宅地の部分と、近似整形地に含まれる宅地以外の部分について、地積がおおむね等しくなるようにします。さらに、その二つの部分の合計地積ができるだけ小さくなるように求めます。形が似ているという印象だけでなく、はみ出した部分と余分に含めた部分の広さも検討する条件です。
入り組んだ輪郭の宅地なら、どこを四角形の内側に取り込み、どこが外側へ出るかによって、検討する形が変わります。土地全体の輪郭と、それぞれの部分の地積を把握したうえで設定を考えます。この方法を採るかどうかも個別の形状によるため、近似整形地を描けたというだけで評価方法を決めず、道路との関係も別に確かめます。
参照先(土地の形に近い整形地を設定する際の条件を確認できます。):国税庁ホームページの「財産評価基本通達(不整形地・間口が狭小な宅地等・がけ地等・土砂災害特別警戒区域内・容積率の異なる地域にわたる宅地の評価ほか)」
SECTION 05
道路に接する状況は、どの取扱いに関わるか
道路に接する幅が狭く見える宅地でも、幅だけで評価上の取扱いを選ぶことはできません。まず、その宅地が道路に接しているか、接していても接道義務を満たしていない状態かを確認します。財産評価基本通達20-3でいう無道路地には、道路に接しない宅地だけでなく、接道義務を満たしていない宅地も含まれます。
狭い間口と無道路地を混同しない
一方、財産評価基本通達20-4の「間口が狭小な宅地等の評価」は、不整形地と無道路地を対象から除いています。そのため、間口が狭いという印象だけでこの取扱いを選ぶ前に、不整形地や無道路地に当たるかを分けて検討する必要があります。道路に少し接しているように見えても、それだけで無道路地ではないと結論づけられません。
宅地を確認する際は、道路に面する場所とその幅、土地の輪郭を別々に捉えます。接道義務を満たすかどうかが未確認なら、その点を確認待ちとして残し、無道路地の該当性を確かめてから間口が狭小な宅地等の取扱いを検討します。形状による判断と接道状況による判断を混ぜないことが、取扱いの選択を急がないための手掛かりになります。
参照先(接道状況を確認する際の無道路地の範囲を確認できます。/間口の狭い宅地に関する評価の対象と除外条件を確認できます。):国税庁ホームページの「財産評価基本通達(不整形地・間口が狭小な宅地等・がけ地等・土砂災害特別警戒区域内・容積率の異なる地域にわたる宅地の評価ほか)」
SECTION 06
がけ地に当たる部分は、どこまで確認するか
宅地の一部にがけのような場所が見えるときは、まず宅地全体の範囲と、傾斜している部分の範囲を分けて確かめます。見た目の傾きだけから、宅地全体が同じ状態にあるとは判断しません。
がけ地等に当たる部分は個別に確かめる
がけ地等の評価の取扱いは、国税庁ホームページの「財産評価基本通達(不整形地・間口が狭小な宅地等・がけ地等・土砂災害特別警戒区域内・容積率の異なる地域にわたる宅地の評価ほか)」で確認します。対象の宅地にがけ地等に当たる部分があるかと、その部分の地積は、それぞれ個別に確かめる事項です。傾斜の境目が分からない段階では、見えている斜面の範囲を推測で決めず、どこまで確認できたかを整理します。範囲が曖昧なまま面積や割合を推測で埋めないようにします。
がけが見えるだけでは、適用する補正率や宅地の評価額は決まりません。また、土地の見た目の傾斜と区域指定の有無も別の確認事項です。
SECTION 07
土砂災害特別警戒区域に入る部分があるか
宅地に傾斜やがけが見えても、それだけで土砂災害特別警戒区域に指定されているとは判断できません。まず、相続した熊本市の宅地について、区域内となる部分があるかを確認します。土地の状態から受ける危険の印象と、区域指定の有無は分けて考える必要があります。
区域内の部分と宅地全体の広さを分けて確認
宅地の一部または全部が土砂災害特別警戒区域内にあり、財産評価基本通達20-6の対象となる場合は、区域内となる部分の地積が宅地全体の地積に占める割合が評価に関わります。指定の有無だけで判断を終えず、宅地のどの部分が区域内に当たるのかを確かめることが重要です。区域内部分の範囲が確認できなければ、割合も確定できません。
例えば、宅地の端に急な斜面が見えても、その斜面の広さをそのまま区域内部分の地積として扱うことはできません。区域指定と宅地の範囲をそれぞれ確かめ、両者が重なる部分を確認してから、通達所定の補正率との関係を検討します。該当範囲が確認待ちなら、割合や評価額を推測で決めずに残しておきます。
参照先(特別警戒区域内にある部分の割合と評価の関係を確認できます。):国税庁ホームページの「財産評価基本通達(不整形地・間口が狭小な宅地等・がけ地等・土砂災害特別警戒区域内・容積率の異なる地域にわたる宅地の評価ほか)」
SECTION 08
複数の特徴がある宅地をどう整理するか
形が整っていない、道路に接する部分が狭い、区域指定にかかる部分があるといった特徴は、同じ宅地に見られることがあります。ただし、見た目の特徴を並べただけでは、どの評価上の取扱いが対象になるかは決まりません。それぞれの対象と除外条件を分けて確認します。
形状・接道・区域指定は別々に確かめる
- 形状は、不整形地に該当するかを確認する。該当する場合の補正率は、不整形の程度や位置、地積に加え、地区区分と地積区分に応じて検討する。
- 接道は、間口が狭小な宅地等の取扱いを検討する前に、不整形地や無道路地に当たらないかを確認する。通達20-4は、これらを対象から除いている。
- 区域指定は、土砂災害特別警戒区域内にある部分の有無を確認し、その部分の地積が宅地全体に占める割合を確かめる。
たとえば、接道部分が狭く、宅地の形も不規則に見える場合でも、間口に関する補正と不整形地の補正を重ねて使えると先に決めることはできません。また、区域内の部分があるか確認できていなければ、その取扱いも確定しません。確認できた形状・接道の状態と、確認待ちの区域内部分を分け、対象と除外条件を一つずつ検討します。
参照先(不整形地の評価方法と補正率を選ぶ際の条件を確認できます。/間口の狭い宅地に関する評価の対象と除外条件を確認できます。/特別警戒区域内にある部分の割合と評価の関係を確認できます。):国税庁ホームページの「財産評価基本通達(不整形地・間口が狭小な宅地等・がけ地等・土砂災害特別警戒区域内・容積率の異なる地域にわたる宅地の評価ほか)」
SECTION 09
宅地の評価額は相続税の計算にどう入るか
宅地の評価額が分かっても、それがそのまま相続税額になるわけではありません。相続税の一般的な計算では、相続や遺贈、相続時精算課税の適用を受ける財産を取得した人ごとに、まず課税価格を計算します。宅地の評価は、この計算で扱う財産の価額を確かめる段階です。
例えば、宅地を誰が取得したかを確認しないまま、土地の評価額だけを見て各人の課税価格を決めることはできません。取得した人ごとに計算するため、宅地の評価に関する確認と、誰がどの財産を取得したかという確認は分けて進めます。評価方法がまだ定まらない宅地については、評価額を確定したものとして計算を進めないことが大切です。
宅地一つの評価額だけから、相続税申告の要否を断定することもできません。先に宅地の状態と評価上の条件を確認し、その評価額を含めて、財産を取得した人ごとの課税価格を計算する順序で考えます。土地の価額と相続税の計算全体を混同しないことが、次に税率を確認するときにも役立ちます。
参照先(宅地の評価額を含む各人の課税価格を計算する順序を確認できます。):国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」
SECTION 10
土地の評価額に税率を直接掛けてよいか
いいえ。相続税の総額を計算する際、相続税の税率を土地の評価額や各人が実際に取得した財産の価額へ直接掛けることはしません。土地の評価額が分かった段階で税率を掛けて概算すると、税率を適用する対象を取り違えてしまいます。
相続税の総額を計算する場合は、正味の遺産額から基礎控除額を差し引いた課税遺産総額を、法定相続分によりあん分します。そこで求める「法定相続分に応ずる取得金額」に税率を適用します。この法定相続分は、基礎控除額の計算に用いる法定相続人の数に応じたものです。
したがって、傾斜地を含む宅地の評価額は、税率を直接掛ける金額ではありません。宅地の評価を確かめる作業と、相続税の総額を計算するときに税率を適用する作業は段階が異なります。土地単独の価額から税額を決めず、相続税の税率を適用する対象と順序を確認してください。
参照先(相続税の税率を土地の評価額へ直接当てはめない理由を確認できます。/法定相続分に応ずる取得金額への税率の適用を確認できます。):国税庁ホームページの「No.4155 相続税の税率」
SECTION 11
宅地の評価を相談する際、何を伝えるか
形状や接道の状況と、未確認の区域指定を分けて伝える
熊本市にある宅地の評価を相談する際は、分かっている形状、道路との接し方、現在の利用状況を伝え、区域指定など未確認の事項は確認待ちとして知らせてください。傾斜があるという印象だけで補正項目を決めず、土地のどの状態を確かめる必要があるかを相談できます。
宮伸一税理士事務所は、熊本県内を対象に相続税申告を取り扱い、そのサービスには不動産の評価が含まれます。土地評価では接道、形状、利用状況、法的制限に関する補正項目を確認すると案内しています。ただし、個別の宅地でどの補正項目が対象になるかや、依頼できる範囲は、相談時に確認が必要です。
手元で確認できた土地の状態と、まだ確かめられていない事項をそのまま伝えれば、何から確認するかを事務所と一緒に整理できます。熊本県内の案件でも、評価額や相続税申告の取扱いを相談前に決めつける必要はありません。個別案件への対応可否も、あわせて確認できます。ご連絡の際は、宮伸一税理士事務所の問い合わせページからお願いします。
参照先(相続税申告サービスにおける不動産評価の取扱いを確認できます。/土地評価の相談で確認する状態や制限を確認できます。):宮伸一税理士事務所ホームページの「相続税申告・生前の相続税試算」
SECTION 12
評価額を決める前に、何を確認し直すか
傾斜やがけが見える宅地の相続税評価では、見た目から評価額を決める前に、どの範囲の宅地を評価するのかを確かめます。そのうえで形状や道路との接し方、利用状況を整理し、不整形地などの評価上の条件に当てはまるかを検討します。形が不規則に見えても、補正率や評価額まで直ちに決まるわけではありません。
土砂災害特別警戒区域については、宅地の一部または全部が区域内にあるかを確かめ、該当する場合は区域内部分の地積が宅地全体に占める割合を確認します。傾斜のある部分を、確認なしに区域内部分とみなさないことが大切です。指定や範囲が未確認なら、確認待ちの事項として扱います。
対象宅地に当てはまる評価上の条件を確かめた後、宅地の価額を含め、財産を取得した人ごとの課税価格の計算を考えます。現時点で個別の評価額や相続税申告の要否は決められません。熊本県内の宅地について、確認できた状態と確認待ちの事項を分けて伝え、相続税評価と申告準備のために何を確かめるか相談してください。
参照先(不整形地の評価方法と補正率を選ぶ際の条件を確認できます。/特別警戒区域内にある部分の割合と評価の関係を確認できます。):国税庁ホームページの「財産評価基本通達(不整形地・間口が狭小な宅地等・がけ地等・土砂災害特別警戒区域内・容積率の異なる地域にわたる宅地の評価ほか)」
参照先(宅地の評価額を含む各人の課税価格を計算する順序を確認できます。):国税庁ホームページの「No.4152 相続税の計算」
FAQ
よくある質問
土地に傾斜があれば、不整形地として評価できますか?
現時点では判断できません。不整形地の評価は土地の形状などに応じた取扱いなので、まず宅地の輪郭、位置、地積を確認し、該当する評価方法を検討してください。
土砂災害特別警戒区域に一部だけ入る宅地も、評価に関係しますか?
はい、区域内となる部分を有する宅地には、その部分が宅地全体に占める地積の割合に応じた評価の取扱いがあります。対象の宅地が区域内にあるかと、その部分の範囲を確認してください。
土地の評価額に相続税の税率を掛ければ、税額が分かりますか?
いいえ、相続税の税率を各人が実際に取得した財産へ直接掛ける計算ではありません。各人の課税価格などを確認したうえで、課税遺産総額を法定相続分であん分した取得金額への税率の適用を確認してください。
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